第15話

「あのね、コウちゃん」


「…なに」


「私…もうすぐ結婚するの」


「え?」


「同じ職場の人でね、すごーく優しい人だよ」


「…そう」




ーーーもしも、素直に想いを口に出せていたら。


ーーーあの時、泣いていた由麻を引き止めていれば。


俺達の“今”は変わっていたかもしれないのに。




そんなありもしない“たられば”ばかり並べて、俺はあの日から一歩も動けないままだった。




でも、それじゃあダメだ。


由麻はもうとっくに前を向いている。


もう二度と会うこともないだろう。


だから…同じ後悔を繰り返さないように。

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