或る青年の遺書
死ぬことにしました。四、五年以前より思案しておりましたが、ようやく決心いたしました。何も死を恐れていたからではありません。もちろん、恐怖が全然無かったわけではありません。しかし、今日までの私は
とりたてて、恥の多い生涯ではなかったと思います。後悔もありません。全ての
どうせ死ぬのだから、という半ば投げやりな気持ちで浮世への不平不満を残すことにしよう。不平不満とは即ち
心のままに下らぬことを申し上げましてお恥ずかしい限りです。この辺りで私の遺書はお終いにいたします。後の世の人よ。どうか優しくあってください。傷を見せびらかすようなことはなさいますな。貴方の痛みは貴方が一番良く知っているでしょう。それでいいじゃありませんか。 生まれ変わるなら、もっと優しく賢い、強い創作者になりたいものです、と言いたいところですが私はもう二度と再び生まれたくはありません。 それでは、これで失敬。本当は何もかもを私は愛していたのです。
これは私がとある港町を訪れた際、海に面した断崖に見つけた手記です。真っ白な封筒に入っていました。あとは
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