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美術館の中には出入り口の近くに喫茶店があったので、そこであったかいコーヒーを飲むことにした。(寄りたいと白湯が言ったのだ。もしだめだと言われたらだだをこねるつもりだった)
白湯はホットコーヒーとチーズケーキを頼んだ。
白玉はあったかいものを頼めばいいのに、レモンジュースとモンブランを頼んだ。
喫茶店の中はとてもあたたかかった。
店員さんがもってきてくれたホットコーヒーを一口飲む。うん。おいしい。それにあったかい。うれしい。と白湯は思って微笑んだ。
喫茶店はおしゃれなお店で、白を基調としていた。テーブルも椅子も真っ白だった。カップには絵が描かれていた。(それは美術館のお土産とかで売っているグッズなのか、あるいは美術館の中にある喫茶店だからなのかはわからなかったけど)かわいい絵だ。(猫とか犬とかだ)
レモンジュースのグラスにも絵が描かれていた。(鳥が二羽飛んでいた)輪切りにされた檸檬がしゅわしゅわとしているレモンジュースの中に浮かんでいてとてもおいしそうだった。
チーズケーキはしっかりとチーズの味がするしっとりとした味わいのとても美味しいチーズケーキだった。モンブランも生クリームたっぷりで上にちゃんと茶色い栗がチョコの小枝と一緒にのっていた。モンブランもとてもおいしそうだった。(一口ちょうだい、とかちょっとだけ交換しようよ、とかは言えなかったから、本当の味はわからないままだったけど)
ケーキのお皿にも絵が描かれていた。それはどこかの架空の街の風景画だった。食べ終わってからっぽになったケーキのお皿の絵を見て、いつかこんな外国の街に白玉と一緒にいってみたいと白湯は思った。(白湯のお皿と白玉のお皿の街の絵が違う街だったのは少し気になったけど)
お会計をして、喫茶店の外に出る。
そのまま美術館の出入り口のところまで歩いていくと、外はもう真暗になっていた。そして、真っ暗な空からは雨ではなくて、真っ白な、今年初めての冷たい雪が降り始めていた。(天気予報は当たったようだった)
その雪の降る風景を見上げて、白湯はなんて美しいんだろう。と思った。(そんな風に思ったのは、ずっと素敵な絵画をたくさん見ていたからかもしれない)
「綺麗だね」と白玉が白湯のすぐ横で言った。
「うん。本当だね」と雪を見ながら(一度、わざとはぁーと白い息をはいて)感動している白湯は言った。
「……、いや、そうじゃなくて、君が」と白玉は言った。
その白玉の声を聞いて、ゆっくりと視線を空から自分の横にいる白玉に移してから、じっといつもと変わらないあまり表情の変わらない白玉の顔を見ながら、「……、え?」と白湯はそう言った。
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