13.駅馬車

 

■■


 私は街外れで待たせておいた馭者ぎょしゃのトムソンの元に寄る。青鹿毛と黒毛の2頭の馬のうち、黒毛の方が私の体に顔を近づけた。撫でてやると気持ちよさそうに小さく喉を鳴らした。


「行こう。エリカは無事に目覚めたらしい。報告があった」


「あの子、懐いてたんだろ? 良いのか?」


「良いんだ。迷惑をかける事になる」


■■


 馬車の中はトムソンがこの街で仕入れた物品が山積みになっているので、私は馭者ぎょしゃの横に座って、煙草をふかす。流石はシェンヴァンが奪った高級タバコだ。香りが豊かで、味も深い。バニラの香料もくどすぎず、上品で質がいい。


「俺ぁ、可哀想だと思うけどな。あの子、ショック受けるぜ」


「私が教えてやれる事は、もう何もない。彼女にとって一緒にいるメリットは薄いよ」


「メリットならいくらでもあるだろ。魔法でも教えてやりゃあ良かったのによ」


「使えないんだよ」


 魔法は生まれた時点で、使えるか使えないかが決まる。つまりエリカは生まれつき気海きかいで魔力を生み出すことが出来ない。気海とは股上の部位で、丹田たんでんともいう。


 今は混血が進んでいるが古来にまで遡ると、体内に魔力を作れる『カタロニア人』と、魔力を作れないが身体能力に優れる『カレドニア人』がいた。険しい山々を包するプライズ辺境伯領ではカレドニア人の血が濃い人間が多い。よって魔法を使える者は少ない。現にプライズ辺境伯領には魔法学校の類がない。


「ふぅん。お偉い家柄であれば使えるわけでもねぇんだな。で、お前さんの行き先は?」


「相乗りだ。お前の都合に合わせて降りるよ。そこからは適当に行く」


「投げやりだな。これからどうするつもりなんだ?」


 私は、数秒黙った。どう言葉にしようか、迷ったのだ。


 つまり言うなれば、きっと私は……、自分の運命を切り拓いたエリカ・フォルダンに影響されたんだろう。あの竜が死んだ日以来、とある想いが内から沸いて出ていた。今、どうしようもなくを求めている。


「私は……、私の事を知りたい」


 煙は白く帯を引いて、青い空に消えていった。


「なぜ私は……、複雑な構造をもつを生み出せるのか……」


「……俺、魔法に疎くて分からねえんだが、それって変なことなのか」


「自分で言うのも何だが、ありえない」


 エリカは魔法のことは詳しくなかったし、辺境伯も事情があると踏んで遠慮したのか、これについて深く追求されなかった。が、どう考えてもおかしい。私だって、おかしいと思った。


 最初は"そういう事もあるだろう"と思って出来るだけ考えないようにすることで心持ちが楽になったが、いつまでもそういうわけにはいかない。


「まず、魔法は四大元素と陰陽から成る。火、水、風、土、そして光と闇だ。それぞれ、『サラマンダー』『ウンディーネ』『シルフ』『ノーム』という精霊が司っている。光と闇は『スプライト』と『リリス』。彼らの餌は魔力だ。魔力は人間や魔物などの動物にしか作れない。つまり私たちが魔力を生み出し、それを分け与える代わりに、彼らの力を借りる。それが、だ」


「えっ! そんな順序を踏んでたのか⁉︎」


 理屈とすれば、だが。誰もがそんな事を考えながら魔法を使っているわけではない。


「じゃあ魔法陣とか詠唱とかは? あれ、何の意味があるの?」


「術の効果や範囲を限定する設計図のようなものかな。コイツを理解したり一から作ったりするのに、みんな研究する」


「回復魔法は?」


「それぞれの精霊の力を借りて、生命力を増幅させてるに過ぎない。メソッドは腐るほどある。入口や過程がどうあれ、最終的に身体が回復してれば、それは回復魔法だ」


 この世にある魔法は全てにおいて、四大元素と陰陽に基づく。


 ──だからこそ、この生命の力はどう説明すればいい?


「わからないんだ。この菌糸を生み出す力が、なんなのか」


 菌糸とは、菌。細胞を持つ。つまり生命だ。生命とは、言ってしまえば抽象概念。意味が曖昧になる。魔法的ではない。生き物、という言葉に置き換えるならば、それはやはり細胞の集合体で、つまり水とタンパク質と無機塩類の塊となる。四大元素と陰陽では表せないほど複雑だ。


 それを私は、普通の魔法、それも初歩的な術を使う感覚で、生み出すことができる。


 なぜ? なぜだろう。わからない。


「それだけじゃない。私は、私が分からない」


 なぜ、私は聖女だとされたのか。聖女でなかったとしたら、なぜ、私は聖女達と同じように日蝕で力を授かったのか。そもそも、聖女とはなんなのか。私は……、なんなのか。


 私の中には、さまざまな疑問が渦巻いている。除籍された事、友人だと思っていた人間がそうではなかった事、聖女ではなかった事、あらゆる事を受け入れられず、その疑問を解消しようと思う事がなかった。簡単に言えば、逃げていたんだ。意識して逃げていたわけではないのが、また腹立たしい。


 だから、今はを知りたい。知る為に行動したい。


 私はエリカと出会い、彼女が自分に打ち勝ち、運命を覆すのを間近で見た。彼女の力で、それが成った。この先、どんな困難が待ち受けていこうと、きっと自分の力で跳ね除けていくだろう。だが、私はそうではない。私も、エリカのように運命とやらに向き合わなくてはならない。ただ、そんな気がした。


 辺境伯と初めて会った日、旅の目的は"力の源泉を探すことか"、と聞かれた。その時は否定したが、成程、確かに年の功と言うわけか、あのオヤジは私よりももっと前を見据えていたのだ。やれやれ、先輩には頭が上がらないな。


「それを知る為に、まずは『原典』を読んでみようと思う」


 神が書いたかどうか私は怪しいと思っているが、原典の存在自体は伝説などではない。何故なら、確かに原典の記るされていた通り、日蝕の日に聖女が生まれたからだ。


 私はそれを読んだ事はない。人伝ひとづてに聞いたり、抽出されて訳された箇所なら知っているが、全文を知らない。私は、そこになにか大きなヒントがあると睨んでいる。


「原典……?」


 トムソンはアホ面を浮かべて天を仰いだ。学園に入る前の私くらい、この世のことに興味がないようだ。


「神が書いたとされる本だ。この世界のことわりについてが記されている」


「すっげー。どこで読めんの、それ。図書館?」


「図書館には置いてないな。誰も彼もが読めるものではないんだ。果たしてどこにあるんだか……」


「アテなしの旅か……」


「一応、アテならある」


「どんな?」


「教皇」


 正教会で一番偉い人間だ。原典のありかを知らないわけがない。


「……ホラ吹いてんのか?」


「ああ、言ってなかったか。アイツが私を一方的にだと決めつけたんだよ」


「……」


 トムソンはひとしきり黙ったあと、大声で『はあ⁉︎』と聞き返した。声がひっくり返っていて、耳に痛い。驚いて、脚に灰が落ちてしまった。それを払いながら、構わず話を続ける。


「とはいえ、学園から追放された私が御目通り叶うとは思ってはいない。いきなり聖都に行って『こんにちは、見せてください』は無理だ」


 トムソンはまだ口をパクパクしている。


「だから、ヤツの息子を頼ることにする。血は繋がってないらしいが、彼は学者だ。教皇よりは会いやすい」


「が、学者? 会いやすい?」


 頭に入っていないのか、鸚鵡オウム返しだ。


「彼も流石に原典を読んだ事はないだろうが、教皇から何か聞いているかも知れない」


 取っ掛かりとしては十分だろう。


「……だが、彼がどこにいるかは正直分からない」


 学者には2通りある。部屋でたくさんの書物に囲まれて己の研究に没頭するか、もしくは、フィールドワークに精を出して己の五感で理論を確かめていくかだ。彼の本を読んだことがあるが、思うに彼の場合は後者。決まった持ち場などないのだ。


「……名前は?」


至聖しせいなる父『聖座クリストフ5世』福音ふくいんの子、正教軍予備役将校『ジャック・ターナー』」


□□


 雷鳴の節。曇天の空の下、木々の緑が軽やかに揺れている。


 12時40分。風向き、北西。風速、5海里。微風。マール領・プライズ辺境伯領のはざまの地、古都セント・アルダン。


 その一団は、燻した香の薫りと絹のような紫煙を微風に乗せて、プライズ辺境伯領に足を踏み入れた。正装のラッパ隊が彼らの到着を祝福する。向かう先はウィンフィールドの北西にある聖地、地下墓地ラナ。水の聖女マリアベル・デミを包する『第二聖女隊』の巡礼である。


□□


 第二聖女隊は大変もてなされた。セント・アルダンの宿ホテルは貸し切られ、隊員には十分な部屋が与えられた。出される食事も、祭りの夜のように豪華絢爛であった。


 実際、セント・アルダンに住む人たちにとっては祭りのようなものだった。この地に、世界を救う聖女がやってきたのだ。こんなに光栄なことなど、あろうものか。


□□


 宿の小広間にて、今後の旅程を再度確認する会議が行われる。各々が日に焼けた古い机を取り囲んでいる。皆、机の上の地図を見ながら、ルートや物資に関する意見を交わしている。その最中、唐突に水の聖女マリアベル・デミはこう言い放った。


「ウィンフィールドに入る前に、パイモンに立ち寄ります」


 パイモンとはプライズ辺境伯領内、北西に位置する街であり、この山間の地方で経済の拠点として栄えている。パイモンには、貿易会社や銀行などが軒を連ねる。財力のある権力者も多く滞在していて、王都の政治に物申す力がある者も少なくはない。


(……やれやれ、始まってしまった)


 事実上この隊を率いている猫背の騎士、正教軍中尉ジャック・ターナーは、マリアベルに気づかれないよう猫背をさらに弓形に曲げて、小さく肩を落とした。


 聖女マリアベルは出発してからこの調子を崩さない。寄り道に次ぐ寄り道で、一向に前に進まないのだ。目的と違う都市に立ち寄っては権力者と面会し、愛想を振り撒き媚を売る。それを繰り返す。この巡礼のついでにと言うべきか、今後、自分の立場が確固たるものになるよう、地盤を固めているように見えた。


「あー……、聖女様。5日後には、ウィンフィールドの教会に立ち寄り、地域の子供達に施しをという話も……」


「──それは、私の活動に本当に必要なことですか? その子供たちは私の力になってくれるんですか?」


 マリアベルはそっと笑みを浮かべ、海のように青い瞳でターナーの目をじっと見て言った。


「ここまでに集めた金品は、商工ギルドに寄贈します。酒宴を用意してください」


 ターナーは思った。これ以上、何をどうして地盤を固める必要があるのか。聖女となった時点で世界にとってかけがえの無い宝となったというのに、これ以上何を求めているのか。


(……まあ"したたか"という事なんだろう)


 そしてマリアベルを、つくづく恐ろしい女だと思った。心の中で、底のないかめと例えた。


「後はよろしく頼みます」


 そう言ってマリアベルは肩にかけた青いヴェールを揺らし、扉に向かって歩き出す。


「行きましょう、リアン」


「はい」


 そして、側に立たせていた第3王子リアンを連れていく。浴場で湯浴みを手伝わせるのだ。


(いやはや、勝手なものだ……)


 ターナーは頭を掻きながら、それを見送った。


□□


 その夜。セント・アルダンの教会にて。祭壇にある無数の蝋燭の灯りが星々のように輝く中、ターナーは女神像に祈りを捧げていた。


 跪き、額に右手の人差し指を当て、そのまま気海まで下ろし、右手で杯の形を作る。これは子宮を意味する。そのまま左肩、右肩と手を持っていき、クロスを作った。正式な礼拝で行われる、聖十字である。寝かせた三日月の腹の上に十字架を立てたようなそれは、女神への忠誠を表すものだ。


「天にまします我らの母よ。願わくは御名みなをあがめさせたまえ。御国みくにを来たらせたまえ。みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ」


 そう言って深く頭を下げ、床に3度口付けをする。1つ目は神が作り出した愛おしい世界に、2つ目は神そのものに、そして3つ目は神が作り出す未来に感謝を示す。


 そして、しばらく頭を上げることがなかった。


□□


 ターナーは部屋に戻り、机に向かう。一冊の白紙の本を取り出して、ペンを取り、長い髪を整えて結いた。そして一心不乱に何かを記し続ける。


(──雷鳴の節、更待月ふけまちづき。16時のミサ。マール領オルフジューンにて3たびの聖女マリアベルの力を見る。聖女、祈りに際し、竜巻の如く金色の神水じんすい御身おんみに這わせ、舞い、福音ふくいん願わん。神水、空に昇り豪雨となって降り、民を悩ませた塩害えんがいはらう。溢るる力の所以ゆえん考察するに、精霊ウンディーネした説を捨てきれないでいる)


 普段の飄々とした表情は鳴りを潜め、ただ涼やかに文字と向き合っている。


 ジャック・ターナーという男は、普通の騎士とはだった。剣を持ち防具を身につけた戦士の時は、背を丸め、不甲斐なさそうな面でのぼっとしているのが特徴であった。


 だが一度机に向かい本やペンを持てば、灯りにかげる顔は雪舞う水面のように淡麗であり、アンバーの瞳は冴えて鮮やかで、背はぴしゃりと伸び、実に騎士然とした。それには、誰をも寄せ付けない異様な"強さ"があった。


 そして、ターナーにとってもこの瞬間は、何よりの幸せだった。誰にも邪魔されず、ただ己のために時間を使えているという感覚が、たまらなく好きであった。


(聖女、魔力放ちて暫し立つも全くの疲れを見せず。恒久的に何処より魔力を授かると見る。つまり──)


 その時、集中を断ち切るようにノックの音がした。ターナーはガックリと肩を落とし、覇気のない顔と猫背とになって、ふらりと立ち上がる。


(……やれやれ、邪魔が入った)


 煙草を咥えて扉を開けると、そこにいたのはリアンであった。


□□


 リアンが持ってきたのは、王都より届いた書簡であった。差し出しは正教会軍部大本営。ターナーはのぼっとした顔で文字を読み、鼻からため息を吐いた。


(ズィーマン・ラットンを預かり、王都まで連れ帰れ、か……)


 ズィーマン・ラットンは、国王アルベルト2世の弟ロブの殺害を実行しようとした、政治犯である。知れぬ誰かより金を受け取っていたことが判明しているが、それ以上のことは分からない。真実を話せば心臓が止まる呪いをかけられている。王都へ輸送する最中にトラブルに見舞われ、プライズ辺境伯領に蜻蛉返りしたと、その書簡には書いてあった。


(それを何故、この隊が引き取らなきゃならないのか……)


 ロブは信仰深く、正教会本部教庁を政治的に支える人物だ。そのロブを殺そうとしたラットンを、正教軍が引き取る。本来、違和感のない話だ。だが、ターナーは直感的に、そう簡単な話ではないと思った。


(……気には留めておくが、先ずは研究が先だ)


 煙草をもみ消す。そして、兵として参加しているのであるから、一旦は深入りしないと心に決める。それよりも、神が聖女に授けた力を解明するのが、自分にとっては重要だ。


 ジャック・ターナーは神を知りたい。少しでも、神に近づきたい。


「どうですか? 楽しいですか?」


 ターナーは、椅子に座って本を読みふけるリアンに声をかけた。


「はい!」


 リアンは屈託のない笑みで返した。


 手に持つ本は、過去にターナーが記した本だった。神の考えと、もたらすもの、そして神は最終的に何を成そうとしているのかの考察が書かれる。


 だがその内容は、まるで神を丸裸にするような過激なものであり、正教会は破廉恥はれんちであるとして焚書の処分を下していた。


「すごいです。僕には考えもつかない」


 ターナーとリアンは、言わば同志であった。2人とも神学を志し、神の意思が何たるか知りたかった。


「巡礼に付き合わされる貴方を心配して、様々持ってきておいて正解だった」


「ありがとうございます。妾の子ですから、こういうのは慣れているので気になさらずとも……。でも嬉しかったです」


 リアンは王族と認められているが、事実、妾の子であった。故に、他兄弟に比べれば不遇な扱いで、公務と称して様々な雑用を押し付けられることも少なくはなかった。


 だが今回の巡礼に限って、リアンはある種のラッキーを感じていた。近場で聖女が何たるかを観察出来るし、何より尊敬するターナーと話が出来るのは、良かった。


「本来なら好きなだけ本を与えたいのだけど、聖女様の世話係のような事までやらせてしまい……。面目ない……」


 食事の世話、着替えの世話は、マリアベルの強い要望によりリアンの仕事となっている。


「いえ、お気になさらず」


 リアンは厄介とも感じていないように、女子のような顔で柔らかく笑った。その微笑みは、大繁盛の酒場の看板娘よりも愛らしく、並大抵の女ではとても歯が立たない。


「役得を感じているのなら良いのですが……」


「ははは。まあ、世の男性は代わってほしいと望むでしょうか……」


「まさか、男娼の真似事のようなことはされてないですね?」


「いや、まさか」


 ターナーとリアンは、この巡礼の中で冗談を言い合えるような仲になっていた。共にマリアベルという女を相手にするのに苦労しているから、こうして夜な夜な話す機会も多いのである。


「……しかし先ほど、聖女様から婚約を取り付けられそうになりました」


 リアンは表情に影を落とした。


「当人たちで決められる問題でもないでしょう」


「どうでしょう。王はそれを前提に僕を送り込んだような気もしています」


「……あー。……つまりは。あなた方が結婚すると、瘴気に立ち向かう強い男女めおとというアイコンとなる。発揚に利用される、と」


「はい」


「……そいつぁ、苦労するなぁ」


 ターナーは2本目のタバコに火をつける。かけてやる言葉が見つからなかったのだ。


「僕はそれで構いません。妾の子でも利用価値があるのなら……。でも、その……。えーっと……」


 リアンはまるで初恋を伝える女児のように、急にもじもじとし始めた。


「……恥ずかしながら、憧れている人がいるのです」


「え〜! そりゃあ失礼しましたっ!」


 その赤裸々な発言で、ターナーは思わず背筋を伸ばして、吸い始めたばかりのタバコをもみ消した。


「……して、そのお相手はどなたで? 女優? バレリーナ?」


「ま、まさかっ! えーっと、生徒です! あっ、でも……。学園にいたのですが、今はいなくて……」


「学園にいた……? 珍しい。好んで退学なんかする学園ですか」


 リアンは小さな声で、こう答えた。


「リトル・キャロルです」


「……リトル、……キャロル」


 ターナーは覚えていた。


 日蝕の日、蝋燭の明かりが床に反射して永久に続いていた、あの大聖堂。手から腐っていき、仕舞いには女神像まで腐らせた、忌み子とされた少女を。それを、来賓席から見ていたのを。

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