死せる猫を巡る巡回とその創作
雨籠もり
前肢(あるいは飛ばしても構わないプロローグ)
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月曜日。
夜。
天気は――雨。
「…………くそ、くそ!」
部屋のなかに響き渡るタイピングの音。
窓を打つ雨音の連弾。
三度鳴るコール音。
俺はデスクトップに表示されている名簿リストを確認すると、素早く保存のマークをタップした。
ジジジ……と緑のバーが満たされていく。焦燥と興奮が体温を上昇させる。
大丈夫だ。
これが成功すれば、すべてのことがうまくいく。たった今、この瞬間――これだけをやってしまえば、俺の人生は、すべてが一気に好転する。
打鍵。
雨の音。
コール音。
煩わしいのでスマートフォンの電源を落とした。苛立ちを放つように、ベッドへスマートフォンをそのまま投げる。思考が巡る。汗がまぶたに下りてくる。
それを素早く拭った――そのときだった。
ぴしゃ、と――シャッターを切るように、雷がそこに落下した。
遅れて轟音が鳴り響く。
しかし恐怖の矛先はそれではなかった。
思わず身構えた、その視線の先。
そこにいる、四足の獣。
――猫。
猫は憐れむような目で、同情するような顔で、慰めるような音色で、小さく鳴いた。
日付はもうすぐ明日に切り替わる。
その刹那。
部屋の扉をノックする、その音が聞こえた。
俺はその方向へ、
振り返る。
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