呪印感染 ― 鈴木正人のロストまでのSS
とし
導入 ― 闘いの夜が明けて
「スーパーマサトチャンネルでした!」
カメラに向かって手の甲の呪印を見せる。少しでも被害者が少なくなるように、そして理解できる人たちにだけ伝わるよう、呪印を乗り越える方法を共有するためだった。今回は、現役オカルトサークル員の由安くんも一緒に映ってくれた。
「由安くん、いつもありがとう!君が出てくれると評判が良くてさ、筋肉が美しいとか、顔が覚えられないのが不思議だとか、コメント欄が盛り上がるんだよね」
「なんか複雑ですけど…まぁ貢献出来てるならよかったです」
今回もなんとか怪異を退けることができた。しかし、いつにも増して激しい抵抗を受け、俺や由安くんは深手を負ってしまった。それでも、まだ立っていることに安堵を覚える。
—翌朝
鈴木正人は、穏やかな朝の光に包まれた工務店の窓を開けた。商店街の賑わいが耳に心地よく響き、遠くから子供たちの笑い声が聞こえてくる。公園の緑が美しく、周囲の木々が朝日に照らされて輝いていた。
悪夢のような一日が終わり、日常に帰ってきたことを実感する。ホラーのハラハラ感も好きだが、こうして平和な瞬間を体感することもまた、彼にとっての幸せだった。
「おはようございます、鈴木さん」
通りすがりに、ドスの効いた声で挨拶してくれたのは、元ヤクザの虎野さんだった。彼は今、絵の道を進んでいるという。画材として、よく自分の店の木材を使ってくれている。
「おはようございます。いい天気ですね」
そういえば、彼と話すようになったのは、呪印が刻まれてからだった。呪印とは絆の証なんて煤藤さんが言っていたけれど、悪いことばかりではなく、こうして人の繋がりが増えたことは喜ばしいことだ。
ふと、手の甲に目をやる。まもなく完成しそうなその呪印は、一夜経ってなお、キリキリと痛む。
「今日は、みんなに会いに行こう」
彼は自転車にまたがり、少し背筋を伸ばしてペダルを踏み出した。
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