自立
天川裕司
自立
タイトル:自立
「今日は目玉焼きが良い?」
「うん!あ、ハンバーグも食べたいかな」
「ハンバーグは昨日食べたでしょ?」
「でも何かおいしいものが食べたい」
いつもの会話が飛び交っている。
でも私はある日、重病に罹ってしまった。
母子家庭でずっとやってきた私たちの家に
暗い影が立ち込めてくる。
1人で椅子に座ることもできず、
その椅子のそばで寄りかかり、
あの子の成長を眺めているだけ。
あの子はずっと私に付きっきりになってたけど、
そのうち現実が嫌になり始め、怖くなる事もあったのか、
外に遊びに行ったり、自分の部屋にこもったりしていた。
でも私のそばにやっぱり帰ってきて、
私のことをずっと眺めている。
うちは母子家庭ながら貧乏で、
体を直そうにもそんなに金は掛けられない。
生前の夫が残してくれた貯金があったので、
それを全部この子の将来のための貯蓄にし、
私よりこの子のために遣ってほしい
と言う気持ちが強かった。
親戚が少し遠くにあるから、
その人たちが私たちの窮乏に気づいて、
この子を助けてくれたら良いのだが。
気づくと、私はこの子がずっと使ってた部屋に居た。
目の前に、プラモデルの山が築かれている。
「…ああ、あの時、あの子が大事にしていたこれさえ壊さなければ…」
あの子は、わずか8歳で世間に自立したのだ。
それは衝動的な自立であり、
ハンデを背負いこの世間を歩いて行く事に変わらない。
人は心の間に壁を持つ。
たったあんなちっぽけなことで
人生が180度変わってしまう。
親子と言えども安心は無い。
人とは或る意味、
生まれながらに自立した存在かもしれない。
神様に生かされて居るのに。兄弟姉妹の筈なのに。
生前、教会に通う友人からもらった聖書が、
私の枕元に、泣いてるようにひっそりあった。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=Y56GbCEd2Uo
自立 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます