第2話

10階建てのマンション丸ごと

社宅だなんて、さすが大手企業。

ここに、入社できてよかったって

深く息を吸った。


「あ。ダンボール出さなきゃ!」


引越し業者の人が親切に

ダンボールを紐で纏めてくれたので

2往復くらいで終わりそうだった。


「8階からエレベーターが降りてくるのかー」


はやくはやくと!こころの中で呟いた。

ポンと鳴ると同時にドアが開く

ダンボールに、気を取られて乗っている人の

顔も見ていなかった。


「今日から引っ越してきた新人さんだよね?」


そう、言われて抱えながら

上を向く。


多分身長は180以上だろう。

私でも分かるような高そうなスーツ

思わず見とれてしまった。


ポン

「危ない!」


ダンボールを、支えていた手が

離れる。


手首と腰を支えられて

倒れずにすんだ。


香水なのか、とてもいい香りが

感じるくらい抱きしめられていた。


全身に、電気が走ったように

動けなかった。


「大丈夫?」


声をかけられて我に返る。


「す、すみません!」

急いでダンボールを抱えて

走る。


ダンボールを持って走れるくらい

私は正気じゃなかった。

ゴミ置き場にやっとダンボールを

捨てて


「あの人8階の人、だよね?」


独り言が、思わず出た。

待って!ていうか、同じ会社の人?!

引っ越し早々にこんなことあって

いいのかと自分に、うんざりした。


でも、とてもたくましくて

いい香りだったなあと思いながら

自分の家に戻った。

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