第2話 いざ試験!
とある田舎町の高校生。
その高校生は、歴史が好きであった。
戦国時代が好きであったが、そこから派生し、日本史にも通じ、日本という国を守る仕事をしたいと考えるようになった。
(……あれは……)
青年、中村幸男の視線の先には地元の神社があった。
青年は神社に向けて手を合わせ、祈る。
(我に七難八苦を与え給え! その代わりに合格させてください!)
まさかのロマンチストである。
後に彼は自衛隊の同期に中村って『意外とロマンチストだよね』とまで言われる始末である。
因みに、『我に七難八苦を』というセリフは戦国時代の武将、山中鹿之介の言った言葉である。
(……寝よ)
更に彼は愚かである。
彼の家は最寄りの駐屯地から30キロ離れた田舎町。
移動中も十分試験勉強が出来たはずなのだ。
しかし、彼は寝た。
「もうつくよ。起きな」
車を運転する母の声で目を覚ます。
目が覚めると見慣れた田園風景とは打って変わって都会であった。
「ふぁ〜わ」
「そんなんで大丈夫なの? 親の反対押し切って自衛隊にしたんだからちゃんとしてよ?」
「大丈夫。大丈夫。試験中に値落ちしないためだから」
彼は危ないから行かせたくないという親の意見を押し切り、自衛隊入隊を決めた。
その理由は、単に自衛隊が好きだったからというのもあるが、その家系も関係していた。
彼は歴史を調べる内に自分の家系も気になり、家系を調べ始めた。
様々な資料を調べ、自分が屯田兵の家系であることに気が付く。
屯田兵とは、明治時代、まだ開拓がほとんどされていなかった北海道に、防衛と開拓を兼ねて本州より移住した、わかりやすく言えば『農民、だけど時々軍隊』である。
父は屯田兵と共に移住した屯田兵の弟。
つまり、屯田兵家族と言われるものの子孫であった。
母はまさかの屯田兵の直系である。
しかも母の祖父の両親は、共に屯田兵の子供であった。
そして、父系の家系からは陸軍最強とも名高い第七師団に入った者が多い事が分かっていた。
「ま、絶対に受かってみせるから」
謎の自信に満ちた彼は試験に挑むのであった。
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