第10話 詩を通じて感じた絆
ポエムの会に佐奈が加わり、部活はさらに賑やかになった。彼女が入ってから、部室には新しいエネルギーが生まれたように感じた。佐奈はまだ少し控えめではあったが、自分の詩を丁寧に書き、少しずつみんなとも打ち解けていった。
ある日、ポエムの会での活動が終わった後、千草と麗美、佐奈の3人は部室に残っていた。夕方の柔らかい光が窓から差し込み、部屋の中は穏やかな雰囲気に包まれていた。
「今日はみんな帰っちゃったけど、せっかくだから少しおしゃべりしていこうか?」麗美が提案すると、千草も佐奈も微笑んで頷いた。
「最近、佐奈ちゃんどう?ポエムの会に慣れてきた?」
千草が優しく声をかけると、佐奈は少し照れたように笑って答えた。
「うん、最初は緊張してたけど、みんな優しくて居心地がいいよ。詩をみんなで共有するって、こんなに楽しいんだなって思った」
「それは良かった!詩って一人で書いても楽しいけど、みんなで感想を言い合ったり、共感したりできるのがすごくいいよね」麗美が続けた。
佐奈は小さく頷きながら、「そうだね。特に、詩を書くことで、自分の感情を整理できるって感じるようになった」と言った。
「私もそう思うよ。詩を書くと、自分の中にある気持ちが自然と出てきて、それを言葉にすることでスッキリすることがあるんだ」
千草も同意しながら話した。詩を書くことは、自分の心の声に耳を傾ける行為でもある。それを共有することで、より深い絆が生まれるのだと、彼女も感じていた。
「そうだ!今日は、みんなで一緒に詩を書いてみない?」
麗美が突然思い立ったように言った。
「え、みんなで?」佐奈が驚いた顔をする。
「そうそう、みんなで一つのテーマを決めて、それぞれが詩を書いてみるの。テーマは何にしようかな…」麗美は少し考え込みながら、ふと窓の外に目を向けた。
「そうだ!今日は夕焼けが綺麗だから、テーマは『夕暮れ』にしようよ。どう?」
千草と佐奈は顔を見合わせて微笑み、頷いた。
「いいね、夕暮れ。最近、私も夕方の景色を見ながらいろいろ考えてたんだ」千草がペンを取り出し、ノートを広げる。
「私もやってみる!」佐奈もノートを準備し、3人はそれぞれ詩を書き始めた。
部室の中には、ペンが紙の上を滑る音だけが響いていた。夕日の光が窓から差し込み、机の上に長い影を落としている。千草は、今日の夕暮れがもたらした静かな気持ちを言葉にしようと、ゆっくりとペンを動かした。
「夕暮れの静けさ」
夕暮れがそっと広がる
空は燃えるような赤
静けさの中で、心も染まる
風が優しく吹き抜ける
何かが終わるその瞬間
でも、同時に何かが始まる予感
夕暮れの静けさは
私の中にある声を響かせる
聞こえる?私の心のささやき
千草が詩を書き終えると、麗美も佐奈も筆を止めた。3人はそれぞれ自分の詩を持ち寄り、互いに見せ合うことにした。
「わあ、千草ちゃんの詩、すごく心に染みるね。夕暮れの静けさが、まるで自分の感情と重なっているような感じがするよ」
麗美が感想を言いながら千草の詩を眺めた。
「ありがとう。夕暮れって、終わりのようで新しい始まりを感じさせるから、そんな気持ちを込めたんだ」千草は少し照れながら答えた。
「佐奈ちゃんの詩も素敵だね。まだ短いけど、夕暮れの儚さをすごく感じさせる」麗美が佐奈の詩に目を通しながら言った。
佐奈は少し恥ずかしそうに笑った。「ありがとう。まだ書き慣れてないけど、夕暮れの風景を見てたら、自然と言葉が出てきたんだ」
「それが詩を書く楽しさだよね。自然に心の中から言葉が湧き出てくる感じ」
千草も嬉しそうに言った。
3人はそれぞれの詩を共有し合い、心の中にある感情を語り合った。詩を書くことで、自分自身だけでなく、他の人の心にも触れることができる。そのことが、千草にとっては何よりも大切な経験となっていた。
「今日は本当に楽しかったな。詩って、こうやってみんなで共有すると、もっと深い意味が生まれるんだね」佐奈がしみじみと語ると、麗美も大きく頷いた。
「うん、私たち3人だからこそ、こんな素敵な詩が書けたんだよね」
千草もまた、心から同感だった。詩を通じて感じる絆は、言葉を超えて深く結ばれていることを実感した。
夕暮れが終わり、夜のとばりが降りる頃、3人はゆっくりと部室を後にした。彼女たちの心には、それぞれの詩と、絆がさらに強まった喜びが刻まれていた。
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