千草と麗美と、ポエム研究会

白鷺(楓賢)

プロローグ

小さなフェリーが、ゆっくりと島に向かって進んでいた。白い波しぶきが青い海に溶けていくのを、千草は船の手すりに寄りかかりながらぼんやりと見つめていた。家族での引っ越しは、予想以上に急だった。都会の生活に別れを告げ、この小さな島での新しい日々が、今日から始まる。


「ここで何かが変わるのかな…」

千草は心の中でつぶやいた。島の風景は、どこか懐かしさを感じさせる穏やかなものだった。高いビルもなく、通り過ぎるのはのんびりとした風景ばかり。これまでの忙しさからは解放されるだろうが、同時に新しい環境に馴染めるか、不安が胸に渦巻いていた。


船が港に着くと、遠くに古びた木造校舎が見えた。千草がこれから通う学校だ。全校生徒100人ほどという小さな高校。どんな人たちがいて、どんな日々が待っているのだろう。


「新しい場所、新しい友達…」

千草は少しだけ前を向き直した。この島で何かを見つけたい。自分を表現できる場所を。そして、その始まりが、すぐそこに待っているのかもしれない。

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