第18話 新たな道

微細たこ焼きを食べたことで、リナと翔太はそれぞれの心の中にあった過去や恐れに正面から向き合い、乗り越えた。研究室には静けさが戻り、二人は自分たちが得た答えをしっかりと噛み締めていた。


リナは、祖父が残した技術をどう使うべきかを理解し、自分自身の未来を見据え始めていた。翔太もまた、失われた記憶を取り戻し、今の自分が何を大切にすべきかを知った。


「これで、すべてが終わったのかな…?」翔太は、静かに研究室の天井を見上げながら呟いた。


「ううん、終わったんじゃないよ。これはきっと、新しい始まりだと思う」とリナは微笑んで答えた。「おじいちゃんが恐れて封印した技術を、私たちが正しく使うことで、多くの人を助けられるかもしれない。だから、私はこれを終わりにしない」


翔太も頷きながら、リナの決意に共感した。「そうだな。お前がこの技術を引き継ぎ、人を助けるために使うのなら、俺もそれを支えるよ。俺たちはここまで一緒に旅をしてきたんだ。これからも一緒に道を作ろう」


リナは翔太の言葉に感謝し、静かに深呼吸をした。二人の心の中には、これまでの旅を通して学んだことや、経験してきたすべての出来事がしっかりと根付いていた。そして、それを未来へ繋げるための道を歩む覚悟が固まった。


「でも、まずはこれからどうするかを考えなきゃね」とリナはふと現実に戻り、笑みを浮かべた。


「そうだな。このたこ焼きをどう世の中に広めていくかを決めないとな。さすがに『食べると心が見えるたこ焼き』なんて普通に売り出したら混乱するかもな」と翔太は冗談めかして言った。


リナは笑いながら、「うん、確かにね。でも、きっと食べた人にとって良い影響を与える使い方があるはず」と答えた。


その時、研究室の奥からゆっくりと足音が近づいてきた。リナの祖父の弟子であり、二人を導いてきた男が現れたのだ。彼は静かに二人を見つめ、柔らかい表情で話し始めた。


「お前たちが微細たこ焼きを完成させたこと、そしてそれを正しく使おうとしていること、私は誇りに思う。お前の祖父も、きっと今この瞬間、お前を見守っているはずだ」


リナは感謝の気持ちを込めて、男に微笑みかけた。「おじいちゃんが残したものを、私は大切にしていきたい。それが私の役割だと信じてる」


男はゆっくりと頷き、「お前ならきっとやり遂げるだろう。だが、忘れるな。この技術は非常に繊細であり、誤った使い方をすれば、再び悲劇を招くことになる。お前の手にかかっているんだ」と警告した。


「分かってる。この力を正しく使うために、慎重に進んでいくよ」とリナはしっかりと答えた。


男は満足そうに頷き、ふと翔太に目を向けた。「そして、翔太。お前も自分の失われた記憶を取り戻し、過去を乗り越えた。これからは、お前の新しい人生が始まるだろう」


翔太はその言葉に深く感謝し、静かに頭を下げた。「ありがとうございます。これからは、過去に囚われることなく、自分の道をしっかりと歩んでいきます」


リナと翔太は、共に歩んできた旅の終わりと、これから始まる新たな旅に向けての決意を胸に、研究室を後にする準備を始めた。


数日後、リナと翔太は町に戻り、今後のことを話し合っていた。リナは微細たこ焼きを慎重に使い、特別な場面で必要な人々に提供することで、その技術を世に役立てることを考えていた。


「これをいきなりたくさんの人に広めるのは難しいかもしれないけど、少しずつ、必要としている人に届けられたらいいね」とリナは言った。


「そうだな。焦らずにやっていこう。きっとこの技術が必要な人がいるはずだ」と翔太も同意した。


リナは翔太に感謝の気持ちを伝え、微笑んだ。「翔太、ありがとう。あなたが一緒にいてくれたおかげで、私はここまで来られた。これからも、どうか一緒にいてくれる?」


翔太は微笑み返し、「もちろん。俺たちはずっと一緒だ。これからも、お互いの道を支え合って進んでいこう」と答えた。


こうして、リナと翔太は新しい一歩を踏み出す準備を整えた。彼らの旅は終わったが、これから始まる新たな挑戦と冒険が待っている。微細たこ焼きの技術を通じて、人々の心を救う道を二人は歩み始めたのだ。

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