第14話 微細たこ焼きの材料

リナの祖父の弟子である男から真実を聞かされたリナと翔太は、複雑な感情を抱きながら、再び地下の研究室に戻ってきた。微細たこ焼きの「最終形」を完成させるためのレシピを手にしていたが、それは単なる料理のレシピを超えたものであり、特別な材料が必要であることが示されていた。


「ここに書かれている材料は…どれも普通のものじゃないな」と翔太はレシピを読みながら呟いた。


リナも驚きを隠せなかった。「おじいちゃんは、ただのたこ焼きを作っていたわけじゃなかったんだね…。これじゃまるで、錬金術みたい…」


レシピには、特定の場所でしか手に入らない特別な材料が記されていた。最も重要な材料は「霧のたこ」と呼ばれるものだった。それは通常のタコではなく、特定の条件下でしか現れない幻のタコだった。


「霧のたこ…? こんなもの、どこで手に入るんだ?」翔太は困惑した表情を浮かべた。


リナも不安そうにレシピを見つめながら言った。「これはただの材料集めじゃないね。おじいちゃんが使っていた特別な材料だなんて、どこで探せばいいのか全く分からない。でも、きっとこの材料が鍵なんだと思う」


その時、再びリナの祖父の弟子である男が静かに口を開いた。


「霧のたこは、この世界に存在するが、見つけるのは容易ではない。それは特定の気象条件と場所でしか姿を現さない。しかも、その場所にたどり着ける者は限られている。だが、お前の祖父はその場所を知っていた。彼は長年その材料を集め、微細たこ焼きを作るために準備していたんだ」


「その場所って、どこにあるんですか?」リナが尋ねると、男は静かに答えた。


「霧のたこは、遠くの山中にある湖に住んでいる。だが、その湖は常に霧に包まれていて、晴れた時にしかその姿を現さない。お前の祖父も、何度もその場所に足を運び、ようやく材料を手に入れた。だが、今やその場所を知る者はほとんどいない」


翔太はその話を聞いて決意を固めた。「でも、俺たちは行かなきゃならない。微細たこ焼きを完成させるためには、その霧のたこが必要なんだ」


リナも同意し、頷いた。「そうだね。おじいちゃんがやり遂げられなかったことを、私たちが続けるためには、行くしかない」


二人は男から霧のたこが住む湖の場所についての情報を聞き、旅の準備を始めた。それは容易な旅ではなかったが、二人は何としても微細たこ焼きを完成させるという決意で溢れていた。


その夜、二人は祖父の家で休むことにした。外は静かで、薄明かりの中、二人は今までの旅路を振り返りながら、微細たこ焼きに関するすべての出来事に思いを馳せた。


「翔太、私はこの旅を通じて、自分が何をしたいのか、少しずつ見えてきた気がする」とリナが言った。


「お前のおじいさんの遺志を継ぐことが、お前にとって大きな意味を持ってるんだな」と翔太は静かに返した。


「うん。おじいちゃんが恐れていたことも分かるけど、私はそれをただ避けるだけじゃなく、ちゃんと理解して、もっと良い形で残したいんだ。微細たこ焼きは危険なものかもしれないけど、私たちの手で、それを救いに変えられるはずだと思う」


翔太はリナの決意に共感しながら、彼自身も過去の記憶に囚われていたことを思い出した。「俺も、自分の記憶に向き合わなきゃならない。お前の言う通り、ただ避けるだけじゃ何も進まないんだ」


二人はお互いに決意を新たにし、翌朝、霧のたこを探す旅へと出発することを決めた。


翌朝、二人は男に見送られ、霧のたこが住むとされる湖に向かうため、山へと向かった。道中は険しく、霧が濃く立ち込める不気味な森の中を進むことになるだろうと予感しながらも、彼らは後戻りするつもりはなかった。


「きっと、この先に答えがあるはずだ」と翔太は呟いた。


リナもまた、静かに頷いた。「おじいちゃんが見つけた材料を、今度は私たちが見つけるんだ」


二人は、微細たこ焼きの最終形を完成させるための旅路に再び足を踏み入れた。そこには、新たな冒険と、さらに深い謎が待ち受けている。


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