第1話 噂の微細たこ焼き
町の片隅に、ひっそりと広がる噂があった。アリよりも小さなたこ焼きが存在するという噂だ。味は極上、口に入れるととろけるように消える、まるで幻のようなたこ焼きだという。しかし、誰もその存在を確認したことはない。売っている場所もわからず、誰が作っているのかさえ知られていない。ただ、人々の間に噂だけが広がっていく。
その噂を初めて耳にしたのは、食べ物に目がない青年、翔太だった。食べることが好きで、特に「たこ焼き」には目がない。全国各地のたこ焼きを食べ歩くほどのたこ焼き通だったが、この「微細たこ焼き」の話は彼にとっても初耳だった。
「そんなバカな。アリよりも小さいたこ焼きだって? どうやって作るんだよ…でも、もし本当にあるなら…」
翔太の心の中に、好奇心が沸き起こる。その夜、彼はいつものたこ焼き屋で、いつものように食べていたが、頭の中はすでに「微細たこ焼き」でいっぱいだった。どうしてもそれを食べてみたい。このまま噂だけで終わらせるのはつまらない。
翌日、翔太は決心した。噂の「微細たこ焼き」を探す旅に出ようと。
最初の手がかりを掴むため、翔太は町の古びた市場へと向かった。人々の間に流れる噂の発信源を探し出そうと、町中を歩き回るが、どの屋台に聞いても「そんなたこ焼きは知らない」と返されるばかり。市場のどこを探しても、「微細たこ焼き」を扱っている店は見つからない。
しかし、ある小さな路地裏に佇む年老いた屋台の前で、ひとりの老人が座っていた。その店の名もない屋台は、ひどく古びていて、まるで時間が止まっているかのような雰囲気が漂っていた。翔太は思い切って老人に声をかける。
「すみません、微細たこ焼きって知っていますか?」
老人は一瞬目を細めたが、すぐに微笑んだ。そして、ゆっくりと答えた。
「微細たこ焼きか…あれは、忘れ去られた味だよ。今ではほとんど誰も作れない。だが、本当にそれを見つけたいなら、この道をずっと奥まで進むんだ。そこに、次の手がかりが待っているかもしれない。」
翔太は不思議に思ったが、その言葉を信じるしかなかった。そして、老人に教えられた道を辿りながら、彼は少しずつ「微細たこ焼き」の秘密に迫っていくことになる。
しかし、これが始まりに過ぎないことを、翔太はまだ知らなかった…。
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