episode3~面倒~
episode3前編~友人の言葉~
【今日のスパークリングも終わり
今、ジム出ました。
先輩たちとご飯食べてから
また走ってきます。】
…トレーニングブログか?これは。
それとも私はお前のマネージャーか?
まるでそのような報告連絡。
出逢ってから2週間。
あの鉄橋下で声をかけられ(…今思えばあれはナンパか?)その日に連絡先交換して毎日メッセージを交わしている。
…と言っても1日2〜3往復程度だけど。
基本的に私がすぐに返さないか、すぐにブチってしまうせいだろう。
それでも懲りずにメッセージくれるけど、私のそういう性格をわかってきたのか、ここ数日は返事を無理に必要としない日記調な文章を送ってくるようになった。
河川敷を走る機会があればそれとなく会わないかという意図の文面で報告してくれるが、それも気まぐれにしか足を運ばなかった。
だからメールは毎日だが、会ったのは初めを除いて、たったの2~3回だけ。
『俺…昔イジメられてて。』
『…は?』
『中学ん時に。ボクシング始めようって思ったキッカケはそれっすね。』
『…ふーん。』
でもその数少ない2~3回の中で知っていったことも少し増えていた。
騒がしい居酒屋の中、ぼんやりとスマホを見つめて、そんなやりとりを思い出していた。
今思うと減量中(?)のボクサーにあたりめをあげたのはマズかったかな。
「何々~!?ナベ!!誰とメッセしてんの?」
我に返る。
そう、今は友人達と居酒屋で飲んでいるのだ。
「あ!!男!?男か!!」
「あはは!!ないない!!ナベに男はできねーよ!!!」
お酒ですっかり出来上がっている友人達はウザい感じに絡んできた。
ユイとチカとタカヒロ。
三人と久々に大学の近くで飲んだけど、いつもの河川敷ではチビチビと自分のペースで飲んで楽しんでいたから周りの呑むペースについていけない。
スマホをポケットに入れた。
返信は、あとでいーや。
そして友達にニヒルな笑顔を見せてやった。
「んー。“おとこ”だよ。」
エーだとかキャーだとか騒いで皆が身を乗り出した。
声のデカさに周りの客もこっちに注目している。
友人のテンションに合わせて笑いながらも、周りの視線に居心地の悪さを感じる。
「うそー!!マジでー!!」
「お前授業サボってるくせに何してんだよ!!」
「どんな子!?写真ないの!?写真!!」
予想以上にいい反応された。
なんというかテンション高い。
「写真なんかないよ。先々週?…ぐらいに会ったばっかだし。」
「「えー!?見たーい!!」」
ぶーたれるチカとタカヒロをよそにユイが聞いてくる。
「どんな感じの人?」
「…年下。…かわいいよ。」
「何々?何で会ったの?」
「……ナンパ?」
「「うっそだぁぁ!!」」
その時、ポケットから振動が伝わった。
大声で喚く二人は無視して、スマホを出した。
まだ返信してないのにキョウからだったのでビックリした。
【夜になっちゃいましたが
今日は会えないですか?】
いつもは走る時間しか送ってこなかったが、こんなに直接的に誘われたのは初めてだった。
いや…
『…会いたいです!!!』
最初に会った時にもはっきり言われたことがあったっけ。
「わー『会えないですか?』だってー!!」
いつのまにか隣のチカが勝手に覗いていた。
「ちょっと!!読まないでよ!!」
「『会えないですか?』~!!敬語なんだぁ!!かわいい!!」
「物好きもいたもんだなー。」
騒ぐ友人を無視してトイレに駆け込み、返事をした。
【今日は友達とご飯食べてるから行けません。トレーニング頑張れ】
送信してから、トイレの個室でため息をついた。
―ブブブブ
返信はやッッ!!
【わかりました。
ごめんなさい;;】
…なぜか謝られた。
そもそも特に何かしたわけでもないのに、何をこんなに懐かれてしまったのか謎だ。
一人であの鉄橋下に行くのがお気に入りだったのに、キョウがいるかもと思うと行きづらくなったし。
そろそろなんか…
めんどくさい…かも。
個室の扉にもたれて、もう一度ため息をついた。
トイレに戻る途中、三人の話し声が聞こえた。
相変わらず楽しそうだ。
「ナベに年下の男。どう思う?」
立ち止まった。
このタイミングで参加したら質問攻めか、いじられ攻めにあって面倒だ。
「てかあいつ、学校まともに来てねぇのによく男なんか引っ掛けてんな!!」
「そんなヒマあんならメッセのひとつ、あたしらに返せよなー!!」
ガハハと笑う三人。
未だ私はその場を動けなかった。
皆笑ってるけど、その笑い声が怖かった。
指先がちょっとだけ冷たい。
「ナベって気まぐれだからねー!!年下君も長続きしないんじゃない?」
「変わってるしねー!!」
「あいつ…「「「めんどくさいからねぇ!!!!」」」
大きな声で笑ってる三人。
これは仲良い故の毒舌笑いなのか…
それとも…
通学もめんどくさい。
授業もめんどくさい。
キョウもめんどくさい。
友人もめんどくさい。
でも何よりめんどくさいのは
私だ。
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