ep6.新じゃが2(肉じゃが)
何から頂こうか。
辺り一面自分の好物達が並ぶなか、どれを取ろうか悩むが、やはり肉じゃがが普段の数倍魅力的に目に映る...やはり祖母の家の肉じゃがはビジュが良すぎる。
私の祖母の家の肉じゃがは、じゃがいもと肉で構成されていると前話で話をしたが、その肉は豚肉でなく牛肉なのだ。しかもサシが入ったタイプのいい牛肉である。そんな肉じゃがなので、じゃがいもは煮汁と牛肉の油でコーティングされ飴色にキラキラ光っている。
よし決めた、私は最初の一口に肉じゃがを選択した。
私はツヤツヤのじゃがいもと牛肉を一緒に頬張る。
よく味が染み、甘じょっぱく煮付けられたじゃがいも、そして一緒に煮付けられた牛肉が良い油分感と牛肉の味でじゃがいもに奥深さを与えている。そして驚く事は、こんなに味が染みているのに汁でビシャビシャになっていないということだ。
「ばあちゃん、肉じゃがめっちゃ美味しいよ」
「あら、ありがとう。アンタ昔から好きだったもんね」
祖母がにこにこしながら答えてくれる、祖父母の家は祖父母が常にニコニコしているのでホッコリする。
「肉じゃが、こんな味染みてるのにビシャビシャにならないのはなんで?」
私は昔からの疑問を祖母に問いかけた。
「水を使わないからね」
「???????」
私の頭の中は疑問符でいっぱいになった。そんな事をしてしまったら普通味は濃くなりすぎてしまうはずだ。
「水を使わなければ、煮崩れも起きづらいし味も良く染みるのよ」
「そしたら水分も足りないし、一部分だけ味が濃くならない?」
「水分はじゃがいもと牛肉から充分出るし、水を入れたらせっかくの牛肉の深い味わいが無くなっちゃうじゃない」と、にこやかに祖母が答えるのでとりあえずの相槌を答えた
「なるほど」
言わんとしている理論は分かるのだけれども....自分で再現するのは至難の業だろうと諦めた。
それから私は他のおかず達も頂きながら肉じゃがと白米をたらふく頂いた、祖母の肉じゃがは濃い味と牛肉の油分によって白米との相性が抜群なのだ。
腹がいっぱいになり、労働で空っぽになってしまった栄養が満たされている感覚だ。
祖母にご馳走様を告げた。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「そりゃ良かったね、あんたもあと何回来れるか分からないんだからもう少し来る頻度増やして頂戴な」
唐突な返答に私は困ってしまった。確かに他の人に比べて私の祖父母達は元気だ。しかし、もう年齢的にいつ倒れったっておかしくない。最近は大学やらバイトやらで忙しくてあまり顔を出せていなかった。
「これからはもう少し頻度を増やすよ」
これから何度祖母の料理が食べられるか分からない、祖父母の元気な顔を見る為、料理をもっと食べる為に私は祖父母宅に行く頻度を増やそうと思う。
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