1-5
試合は2ラウンド制、同点の場合は5分1ラウンドの延長あり。スラン会長の見立てによれば、現状ポイントではジムが不利である。
勝つためには、攻めなければいけない。
ゴングが鳴り、レイノルドはまっすぐに攻めてきた。ジムもそれを打撃で迎え撃つ。1ラウンドとは変わり、激しい打ち合いになった。
レイノルドのパンチが、ジムの頬をとらえる。動きが止まったジムをしとめにかかったレイノルドだったが、そこにジムの片足タックルが突き刺さった。
レイノルドの体が、斜めに倒れる。ジムは半身になった相手の体に乗った。必死に抜け出そうとするレイノルドだったが、ジムは上手くコントロールして逃さない。
膠着状態が続くが、今度はブレイクがかからなかった。ジムがじっくりと攻めているのがわかるからである。体勢を整え、相手の反撃の芽を摘み、グラウンドテクニックも計っていく。確実に仕留められると確信したジムは、ついに相手の腕を取りに行った。
そこからも、はた目にはのらりくらりとした攻防が続いた。だがジムは、勝利のために少しずつ網を手繰り寄せていた。
2ラウンド8分を過ぎた時。ジムの長い手がレイノルドの右手をからめとる。レイノルドは逃れようもがくが、どうしようもなかった。
2ラウンド9分3秒、ジムはアームロックで勝利した。
「いやあ、本当に抱き着いて終わるかと思ったよ」
そう言いながらスラン会長は、ジョッキのコーラをぐびぐびと飲んだ。笑いながら他の門下生たちはビールをのどに流し込む。
「私はタックルされたときに終わったと思ったけど。全く想定外な顔してた」
そう言ったのはレリンである。すでにジョッキは空になっていた。
「おおっ、レリンはいつも豪快だな。クレメンスはどうした、少ししか飲んでないな」
スランが肩を組むと、クレメンスはぼそっとつぶやいた。
「初めてこんなうまいものを飲みました」
「おお、ビールは初めてか」
「店で何かを飲むのが初めてです」
「そうか。活躍したらな、どんどん飲めるんだぞ」
「頑張ります……」
クレメンスは、ジョッキを抱きしめるようにして少しずつビールを飲んだ。
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