ヒロイン・ワールド
岡田宗弥(筆遅ですが執筆中!)
1章第1話:異能バトルは突然に
悪夢を見ていたらしく、ハッと目が覚める。周囲を見渡すと、ベットと体が汗でぐしょぐしょになっていた。
「……風呂入るか。」
そう体を起こすと、手元からクシャッと紙の感触がする。
その紙を見ると、ただ三文字、飽きた。と書かれていた。
これはこれで不気味だ。
数分後、気分転換の風呂から上がり、着替えてそのまま外へ出る。
しかし何より
「暑ぅ……」
暑さから不意にそんな声が漏れる。
しかし暑いのは道を行く人も同じようで、皆うなだれている。
そんな道の中、ふと周囲に変な空気が流れ始める。気づけば周りに人が見当たらない。
しかし、誰もいない静けさはすぐに消え去った。
音に右を向けば道をトラックが猛スピードで迫る。
驚きで体が硬直する。
このスピードじゃ避けられないし、死ぬことは確実だろう。
そりゃ死ぬことは怖いし嫌だけど仕方ない。
そう心半ば諦めていた、しかし。
「こんなとこで諦められると困るなぁ。」
そう空から声が聞こえると、降ってきた少女がトラックを叩いた。
「……なにこれ。」
展開に置いてけぼりだ。
状況を整理すると、トラックに轢かれかけ、それを空から降ってきた少女に助けられたと。
一応わかったがどうしてこうなった。
「ふぅ、人助けも楽じゃないねぇ。」
状況の理解ができない俺をよそに少女が顔を上げる。そこから俺の質問攻めが始まる。
「どうやって飛ばしたんだあのトラック!お前何者?怪我してないか?病院行くか?」
「一回落ち着いて、なんかバカっぽいよ。」
「えぇ……」
「今の音で警察とが来るとめんどくさいし、近くのカフェとかで……」
その瞬間彼女が俺の背後を見て少し止まる。
「どうした?」
「後ろを見ないで屈んで!」
言う通りに屈むと頭上から銃声が数発鳴る。
驚いて少女の顔を見れば、真剣な面持ちをしていた。
「ッ!これじゃ埒が開かない!君、手伝って。」
「手伝うったって何を……」
「まずは後ろを見て。」
「さっきと言っていることが逆じゃ……」
背後の情景を見て言葉に詰まった。
黒い影のようなものがトラックの前方を飲み込み、暴れ出さんとエンジンを吹かせていた。
呆気にとられる俺をよそに少女が走り出し、銃弾をトラックに命中させる。しかし弾が飲み込まれ効果がない。
「もういい!君、私の踏み台になって!」
「そんな急に言われても……」
俺が困惑していると、諦めたように少女がこちらに向かって走り出す。距離が近づいた瞬間、跳んだ彼女が俺の屈んだ背を踏み台にして三角飛びする。
そのままトラックの真上まで来ると、体を回転させ銃床でトラックを叩き潰した。
バゴンッと天井の凹む音がすると、言葉にならない異音をあげながらトラックから何かが弾き出される。
それは炎を纏った黒い球のようで、球が煌々とした炎を纏っていた。
「それを潰して!早く!」
命令のままに踏み潰すと跡形もなく消え去った。
訳のわからない化け物に襲われかけた挙句、少女の踏み台にされる…
ますます意味がわからなくなってきた。
「じゃあ、言った通りカフェに行こうか。」
そんな中、彼女はそう言って手を差し伸べてきた。
その後、カフェにたどり着くと、当然のように話が始まった。
「さて、まずは自己紹介からかな。」
「ちょっと待てよ早いんだよ!」
「何が?」
「展開だわ。」
「いいツッコミだね、ポイント高いよ。」
「ポイントってどこで使うんだよ。」
「ポイントは使うだけのものじゃないでしょ?」
「屁理屈を……」
「屁理屈はそっちでしょ。」
彼女は呆れたようにため息をつく。
「全く、話がそれちゃったじゃない。私はリヴ。君は?」
「……俺は
「うん、素直で良し。」
「なんで上から目線なんだよ。」
「まあ踏み台になってた時点で私より下でしょ?」
「それは物理的にだろ。」
「細かいね。モテないよ?」
「いや細かくねぇだろ...」
モテないは心に刺さるからやめてくれ……
と、ここで俺は重要なことを思い出す。
「ところで、あの化け物はなんなんだ?」
「あれはね、《惨滓》だよ。」
「《惨滓》?」
そう言ってリヴはカフェ備え付けの紙に惨滓と漢字を書く。
「そう。死んだ時の無念とか怨念が積み重なって出来上がる幽霊みたいな?」
「幽霊、か。だから車に取り憑いたみたいな感じか?」
「そうだね、奴らは生きてる人を領域に引き込む。」
「だから俺だけだったのか?」
「そう。一般人は領域に外側から近づけば反射的に避けるようにさせられる。」
「じゃあお前はどうやって入ったんだ。」
「いい質問だね、優間くん。コツは領域を認識することなのさ。」
得意げにリヴが語る。しかし。
「認識ってなんなのさ。大きさとかってわかるのか?まずどこにいるのかもわからないだろ?」
今回も急にトラックで俺を轢こうとし、急に暴れ出した。明らかに突発的だ。
「ほら、《惨滓》って言うだけあって、周りに残滓が漂い出すんだ。
それが合図。」
「それって俺にもわかるのか?」
「うん。一度、《惨滓》と対峙した人間は大体その残滓を感じ取れるようになるんだ。」
「ふーん。」
「さて、ここまでは前置き。ここからが本当の目的だよ。」
「え?」
「優間くん。君にはこの《惨滓》狩りを手伝ってもらうよ。」
「いや、嫌だよ。」
しかし、俺は否応関係なしに物語に巻き込まれていくことを、これから出会う人は誰も知らない。
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