第15話 第1章ー⑭

 「『ふっ、今度は魔法で攻撃ですか。だが詠唱させる暇など…』」


 「【火球フレール】!!」


 「『なにっ?!』」


 エイシャが油断している所に無詠唱の火球を放った。奴は詠唱に時間が掛かると踏んだのだろう。


 しかし、今の俺は200%の力を引き出せる状態だ。無詠唱の魔法といえど、地面を削ってしまうサイズの火球を放つ事も容易い。


 「『くつ!』」


 とはいえ、速度はそこまで速いわけではなく、油断していたエイシャにすら避けられてしまった。やはり攻撃魔法は当てるのが難儀だ。


 だが、今はそれでいい。おかげでエイシャと俺の刀を奪った手の距離が離れた。取り返すなら今しかない。


 「はあああああっ!!」


 離れた事を確認した俺は脱兎跳躍を駆使して手の方に向かって跳んでいく。


 一瞬で手の元まで辿り着いた俺は即座に刀を握る。今度こそ取り返してみせる。


 「ふんっ!!!」


 「?!」


 刀に魔力を込めると、炎が噴火のような勢いで噴出され、手の中で炎が溢れだしていた。これだけの火力なら抜ける筈。底なし沼のようだと隠喩で表現したものの、所詮は魔法で作り出された生物。魔力による攻撃は耐えられまい。


 「いよしっ!?」


 中を炎で充満にされた手は、ハジけるように消失し、俺は刀を取り返す事に成功。あとは…


 「あとは、お前だけだ」


 「『…』」


 取り返した刀をエイシャに向ける。流石にもう余裕がない。この一撃で確実に仕留めなければ。


 「炎獅子、蒼炎、光炎万丈」


 刀を上段に構え、詠唱を唱える。詠唱を唱えると刀身に炎が集約され、刀身に集まった真っ赤な炎が徐々に青白に変色していく。


 炎を極限まで濃縮し放たれる一振は赫火断刀の数倍の威力を誇る。威力が高いだけあって、業火刀が一回分しか持たず砕けてしまうのが難点だが。


 「燎原りょうげんの火、劫火ごうか、業火、瞋恚しんいの炎!」


 詠唱を続けると青白い炎の量は刀身の中で膨れ上がり、あまりの量で勝手に刀がカタカタ震え出して今にも壊れそうだ。頼む、もう少しだけ持ってくれ。


 「『ほう、面白い』」


 「!?」


 そんななか、エイシャからとんでもない魔力を感じる。恐らく奴も全力の魔法で迎え撃つ気か。


 「『イノス・レールステン。私も今から全力の魔法をお見せしましょう。これでどちらが立っていられるか勝負といきましょう』」


 「…」


 そう言うとエイシャは、目の前に巨大な黒い球体を出現させる。あの球体、ゴーレムの時よりも遥かにデカい。


 「『■■■、◆◆◆!』」


 「ッ?!」


 黒い球体を出現させたエイシャは詠唱を唱える始めるが、あの詠唱の発音が明らかに人語の発音ではない。魔族の言葉か。


 詠唱を唱えるとどんどん球体がデカくなっていく。既にゴーレム以上の大きさだった筈なのに、気が付けば結界の3分の1程の大きさにまで膨れ上がっていた。間違いない、相当強力な魔法だ。


 あの強力な魔法を斬り、更に奴まで斬らなければならないが、イケるのか?


 「業火滅却!!」
















 いや、やるんだ! 絶対に!! 村を、村の人々を、家族を、守る為に!!!
































           「【獅炎咆斬ライム・ロアッシュ】!!!!」




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る