第35話

 母さん…

 母さんのヴィオラは、俺が生涯奏でてやるよ……


 ♪♪~…


 哲は…母の音に、いだかれる……



「………」


 矢張、夢…現実は、悪夢だ……。


 先刻せんこくは、希望に命じられる儘に―希望の逸物を、銜えさせられた。


 気持ち悪い…吐きそうだ……


 哲は、首錠に触れ…即座に、指を離した。


 ♪♪~…


 現在いまの己に取って、唯一無二の救いは…ヴィオラを弾く事のみ……


 何時も、一緒だった…母さん……

 俺が死ぬ迄…どうか、傍に居て……!


 ♪♪♪♪~…


「…その曲、いいよね…?

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