母のヴィオラが、紡ぐ音―哲と希望(のぞむ)―

第17話

「―…!?」


 哲は、ベッドから跳ね起きた。


 不覚にも、意識を失って仕舞ったらしい…彼は恐る恐る、己の頸筋に触れる―


「!!」


 夢じゃない……!


 首錠が着けられた、哲の頸……。


 室内には、ノゾムの姿は見えない―この残忍な拘束具に安心したのか、両足の拘束が解かれている……


「服…」


 哲は、ベッドから床へとり立ち、着衣を拾っては、身に纏う…首錠は、服の下に隠れ、見えなくなった……。


「……はあ……」


 哲は、深呼吸をし…クラッチバッグを手にした。


 老獪な奸智を巡らせ、周到な罠を仕掛けた、あの男だ…概ね、期待は出来まいが……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る