奈落の章~玉紀(たまき)編~

少年は何時も通り、上得意客の指名で配達に向かった。

第25話

 TRRRR…


「は~い、佐原酒店―」


 街では有触れた、中規模の酒屋。


 店員の一人である少年が、店の電話を取る―


「修藤だ。


 何時ものワインを…

 君が届けてくれ」


「分っかりましたぁ!

 あざーっす!」


 馴染の、上得意客…少年は、店主に向かって声を上げ、彼に云った。


「毎度の修藤さん!


 高級ワインセレクション・一セット―


 配達、行ってきまーすっ!!」


「君の仕事の早さには、感心するが…


 くれぐれも原付バイクで、スピード違反のキップを切られるなよ?

 アカダマ君」


「御意!」

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