第29話

 君に提供しても、驚異的に回復した、彼だったのに……!」


「あ…あ…


 …鋭知さんっ…!」


「…彼は何かを、予感していたのかも知れない……


 『祈に会わずに、俺は退院する』、と……」


 担当医は―思い切った様に―鋭知が入院時に所持していた金品の中から、一通の封書を取り出し…祈に差し出した。


〝祈へ〟


「!」


「この手紙は、彼が…


 『俺が退院した後で、センセイから祈に渡してくれ』、と…


 私に託した物だ……


 だから…

 君に預けよう……!」


「Dr.(せんせい)……


 ありがとう…ございます……!」

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