第72話

「…うん、元気よ?」


 矢張、この母子おやこには、何も気付かせる可きではない…


 理律夫と巫琴は瞳で頷き合い、敢えて彼女等の近くに座った……。


「…サノ、さん…ですか?(躊躇)」


「えっ?」


「診察券が、私の足元に…」


「!?」


〝診察券

 作野巫琴 様〟


「ええ…私のです、済みません……」


「どうぞ……


 一寸珍しい、お名前なんですね……?」


「はい…

 一度伝えると、御分かり戴けるんですけど(汗)」


 外記夫人の読み違いを、巫琴も理律夫も訂正しなかった。

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