第67話

「あざーす☆


 和嶋先輩、哲ちゃん、けいちゃん…

 御疲れ様でした!」


「御先…」

「御疲れ…」

「おつ…」


 スーツの蝶ネクタイを外し、楽器ケースにチェロを仕舞う明良一人を残して―軽口を叩いていた三人の楽団員は、連れ立って楽屋から退出した。


 彼等は、明良と彼の兄・理律夫の事情を少なからず知っている、数少ない人物であった―

 それ故に、瞬時に天降のピアノに惑溺し、一気に天降に心酔して仕舞った明良を、懸念せずには居られなかったのだ……。


「作野君は、天降に傾倒する余り、気付かないけど…

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