第39話

 あの、お兄ちゃんの指…ヘンだよ?」


「!」


 頑是無い子供が、好奇の眼と指で、彼を差す…


 そして―


「シッ!

 怪我しちゃったのよ……


 そんな事、言わないの…

 可哀想でしょ?」


 子を窘めつつ、彼に憐憫の表情かおを向ける母親…


「………」


 斯様な言動にえ切れず、思わず目を伏せ、調律作業用の手袋を握り締める事も、少なくは無かった……。


 だが―


「このピアノは…

 とても優しく、弾かれてますね……?

 優しい音で、応えてくれますよ……


 ほら……♪」


「わぁっ…♪」

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