第33話

 増大する負の感情を、必死でこらえる二人の耳に、少年の付添人たる弁護士が、信じ難い言葉を発した―


「あの日…


 作野君が、チェロを持っていなければ…


 何も構う事無く、事件を起こしもしなかった……!」


「!!」「!?」


「作野君と溝呂木さんは、不運にも目を引いた…


 故に、少年達は、偶発的衝動に駆られた……


 そうだね?」


「はい……

 でも、謝罪したいと思います……」


「………」

「……リッちゃん………」


 加害少年等の、心にも無い改悛表明など、二人に取っては、何の感情も起こり得なかった。

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