練習曲(エチュード)―明良と理律夫、そして巫琴―

　12月24日―

　当時、小学五年生だった明良は、顔を火照らせ…自室のベッドで寝ていた。

「ぼくの、チェロ…

　きょうは絶対、取りに行くんだ!?」

「未だ熱も、下がってないでしょ？

　無茶言わないの！」

「兄ちゃんとミッちゃんと、合奏したいよ!!

　クリスマスパーティーで、『白鳥』弾くって…

　約束したんだもん!?」

「アキちゃん……」

　駄々を捏ねる明良を、彼の母が宥め賺している所へ―理律夫が入って来た。

「母さん…

　僕、ミッちゃんと河原楽器に行くから……

　アキのチェロ…

　受け取って来るよ？」

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