ふさわしい結末
久遠ユウ
プロローグ
『カーレーサーになるのが夢だった。でもアクセルを全開できない奴がレーサーになれるわけないと馬鹿にされ、腹が立ってスピードを出してしまった』
地域新聞の隅っこに掲載された、見過ごされそうな小さな記事の書き出し。
馬鹿正直とも思える文字の羅列は、読者を呆れさせるものだった。
人を殺しておいてどんな顔で夢を語っていたのか。
被疑者のコメントは重みのない言葉ばかりで、命を奪ったと言う感覚がまるでない。
制限速度を超え、スピード超過でハンドル操作を誤り、軽自動車が岩肌に衝突。
助手席にいた男子高校生の体は遠心力で窓ガラスを突き破り、車体と岩肌に挟まれ即死だった。
免許を取得してまだ四カ月の運転手の怪我は、鼻骨骨折と擦過傷といった軽症で済んだ。
危険運転致死容疑で書類送検された十九歳の少年は、少年法適応と高を括り、事件当時のことをつらつら語ったのか。
新聞には武勇伝のような被疑者談が記載されていた。
時速百キロ超のスピードを出し、事故を起こして一人の人間の命を奪ったと言うのに。
だが、無知な被疑者は知らなかった。少年法が改正されていたことを。
改正民法が施行され、成人年齢が十八歳に引き下げられた。そして生まれたのが、十八歳と十九歳の少年を「特定少年」とし、「少年」とも「成人」とも異なる特別な取り扱いが設けられた。
十九歳の被疑者が起こした行為は、極めて危険で無謀な運転と判断され、家栽から地方裁判所へと逆送。
起訴となり実名や写真など、本人を特定できる情報は世の中に晒された。
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