第6話 【MOVIE1】大物ユーチューバーになってやる!

<キンコーンカンコーン>


チャイムが教室に鳴り響く。


バタンっと、椅子が動く音がすると後ろに座る間切の周りに人が集まってきた。


「間切さんがユーチューバーってほんと?」


「こないだの動画見たよ!かわいかった!」


「ネットで晒されてれる動画ってほんとに間切さん?」




「……え、えっと。」


戸惑う間切のことなんか、お構いなしに質問攻めする生徒たち。


(……質問するならせめて一個ずつにしてやれよ。)


つーか、何か俺と話してる時と態度ちがくね?


あいつの性格だと『うっさい! 引っ込め!バカ!』とでも言いそうなんだけど。




そんなことを考えていると騒音の如き声たちを遮る勇者が現れた。




「やめてください! もも様困ってます!」




振り向くと、すっごく背の低い少女が立っていた。140あるのかって思うぐらいちっちゃい背丈。髪は黒髪でショートヘア、一部だけコバルトブルーでその部分は編まれていた。


メイクはどちらかと言うと、正統派ギャルよりで間切とは対照的。


ロリ顔で、声もむっちゃロリで、制服を来てる姿がちょっと不自然で、そのギャップがたまらなくロリかわいい。


……けど、おっぱいだった。




俺はこの子みたいに低身長ロリ系は、おっぱいよりちっぱいが好みだし、間切みたいに普通の身長なら、ちっぱいよりおっぱいが好みだったから『なんだかなぁ……』って感じだった。




「なにお前、間切さんの何なの?」


「ウチらの邪魔しないでくれる?」


「そーだ!そーだ!」




「……うぅ。」


縮こまるロリ子。


よっわ。 さっきまでの勢いはどこいったんだよ。


(……巻き込まれたらめんどくさそうだし、帰るか。)


そう思った俺は自分の席を立って、後ろに座る間切の机を横切る。


ちょうど通路上に居たロリ子と目が合って、ニヤリと笑みを浮かべた。


――その瞬間。




<パァン>


物凄い破裂音がすると、モクモクと七色の煙が教室中に漂い始めた。


教室中から「ゴホンゴホン」と咳が聞こえる。




「なんだ!? 新手のテロリストか?」


「いえ、現役JKです」


と耳にあのロリ声が響いた。


「ちょっと来てください」


――グイッと、制服を引っ張られる俺。


「行きますよ、もも様。」


とまたロリ声。


「う、うん」


どうやら、間切のやつも手を引かれたらしい。




―――――手を引かれた俺たちは階段下の踊り場へ到着した。


「もも様、怪我は無いですか!?」


「うん。ありがと、藍那。」


間切がロリ子の頭を撫でると、ロリ子は「えへへ」と微笑んだ。


その笑顔を見てるこっちまで微笑ましくなってくる。


んなことを考えていると、ロリ子が振り返って俺の方へ歩いてきた。




「はいこれ、鞄です。」


ロリ子に俺の鞄を手渡された。


「ありがとな。……えっと、名前なんてんだっけ」


「いんてるあいなです。 ボクのことは藍那で良いですよ。」


「分かった。」下の名前で呼んで!って言われたの初めてかも。「―今はそれよりも」


「……さっきの、お前だよな!? 何しやがったんだ?」


「スモークボールとクラッカーボールをぶん投げてやりました」


それって煙花火とかんしゃく玉!?


んな危ないこと無表情で言うなよ……。


「……とんでもないことすんだな、お前。」


「ボクはもも様のためなら何でもしますから。」


ニコッと微笑むロリ子。


「それより、教室でyoutubeの話は禁止ですっ!」


「……いいですね!?」






床に横になって、俺はスマホでバイトの求人を探していた。


すると、間切の声が頭をよぎってきやがった。


『この炎上を利用しなさい。成功すれば生活費どころか一生遊んで暮らせるわよ。』


『失敗を恐れて何も行動をしない人に、成功なんてあるわけないじゃない。』


『必要なのは出来る自信じゃない。やってやる!ってあんた自身でしょ。』




るっせえ、沸いてくるんじゃねえよ。




偉そうでムカつくのに、あんな暴言の塊みたいな、口先マシンガンギャルの言ったことなのに、返す言葉が見つからないのは何故だろう。


「バイト、したくねーしな……。」




結論から言おう。


俺はユーチューバーを目指すことにした!




……失敗したら?




そんなこと考えるのはあとだ、失敗してから考えればいい。


宝くじだって、馬券だって、きなこ棒だって、買わなきゃ当たりは出ない。


何も行動しない奴に、成功は無い。


ムカつくけど、マジでその通りだよ。


思い返せば、俺の人生失敗ばかりだった。


親族には捨てられ、バイトはクビ、気づけば大炎上。


この機に動かずにいつ動くっていうんだ!




炎上だがなんだか知んねーけど、利用してやるよ。


ただし、利用するのは間切、てめえもだ。


お前の力全部利用して、大物ユーチューバーになってやる!


俺はYoutubeのことなんざ、全く分かんねえからな。


そんでもって、てめえを越した暁には「お前も、大したことねーな!自称スーパー美少女ユーチューバーさんよぉ!」とでも言って嘲笑ってやる。


あいつが地面に足つく姿、想像するだけで笑いが止まんねえぜ。


「フ…フハハ……フハッハハハハハ!!!」


突然、バタッと障子が開く。


「うっさい!」


こつんと、妹の真衣から軽いチョップをもらった。


「にーに、また漫画の真似ですか……?」


ジト目で俺を睨む真衣。


「ちげーよ。俺はそういうのはもう卒業したんだ。」


「今日からの俺はnew結人だ!」


「……へ?(DSじゃないんだから……)」

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