俺がYouTuberの可愛い美天使とキスして大炎上したら純愛orNTRな件

みうく

第1話 【MOVIE0】プロローグ

バキバキに割られた窓ガラス。凸凹に穴の空いたドアの奥。


俺は一人、灯りも点けずに布団の中に引きこもっていた。




『失敗を恐れて何も行動をしない人に、成功なんてあるわけないじゃない。』




いつか、間切こももが言ったこの言葉。


この言葉に俺はまんまと乗せられた。


つくづく思う。


俺があの時、あいつの誘いを断れていたらって。


「どうして、こんなことになっちまったんだよ。」


……これが因果応報ってやつなのかな。


他人を利用しようとして、俺は利用されて。


間切を傷つけて。


たった一人の家族を失って。


俺は謝っただけで、許された気になってたんだ。


謝っても、願っても、過去には戻らない。


失ったものは戻りはしないのに。


「―――真衣。バカな兄貴でごめん。」


……俺は無力だ。




<ピコッ>


スマホの通知音が真っ暗な部屋に鳴り響く。


『例・の・動・画・、1000万再生超えたぞ!』とメッセージ。


項垂れる身体を起こして、リンクをタップすると動画が再生される。


……耳にあいつらの声が入ってくる。


今思えば、真衣との記録はこれしか残ってないのか。


「……なんで、こんなもんしか残ってねえんだ……。」


悔しい、悔しい、悔しい……。


気づけば、2つの液体が手に着いていた。


……久しぶりだ。この虚しさ。


バイト漬けの頃はイヤな事がある度にコレに逃げてたのに。


―――――そっか。


イヤじゃなかったのかもな。あいつらと過ごす日々が。




【MOVIE0】




「オラッ!ちゃんと声出せや!」


「はい、店長! すんません……」




「新発売のカスタードクリームコロッケはいかがでしょうか~! 試食もありますのでぜひ召し上がってください!」


(……はぁ。つらい。)


 俺は今、近所のスーパーでアルバイトをしている。




「君、妹ちゃんの学費稼ぎたいんでしょ? だったら声出して。君の給料も売上から支払われるんだからね?」


「そうっすね、がんばります」




そう答えてやると納得したのか、店長は何処かへ去っていった。




「そうじゃないわよ。そこのマヌケ面」


と声が響く。


見上げると女の子が立っていた。


桃色がかった綺麗な髪の毛、パッツン前髪のボブ。


メイクはナチュラルで控えめ、清楚ギャル風で、白いコードがすごく似合ってる。


マガジンのグラビアに居そうな面で、乃木坂のセンターに居そうで、だけど幼い顔で、何かもう、めちゃくちゃ可愛いかった。


……けど、ちっぱいだった。






「こんなブラック企業理論、真に受ける必要なんてない。」




女の子は髪をはらって、偉そうにそう言った。


「えっと、お客様の言ってる意味が分からないのですが?」


俺は無難なマニュアル対応で答えた。




「給料は売上から支払われるんじゃない。会社から支払われるのよ」




「イマイチ伝わってこないんすけど、どういう意味っすか?」




「……あんたバカァ?」




アスカの真似? にしても、いきなりバカはひどい。




「時給ってのはね、拘束された時間に見合った金額が支払われるの。いわばこれは会社があんたの時間を買ってるってわけ。売上なんて何の関係もないのよ。」




たしかに、頑張って売上に貢献しても給料は上がってくれやしない。 逆もまた然りだと思う。


それでも、俺にはあるんだ。働かなければいけない理由が。




「そうっすね。でも、一応昇給もあるらしいんで……」




「その昇給とやらをされるまでに何時間働かないといけないわけ? 増えても10円とかでしょ。そんだけの為にバカみたいに働くなんてつくづくバカね。」




少女は、鼻で笑いながらそう言った。


そうかもしんない。けど、だけど、どうして出会って一分のこいつにバカバカ言われなきゃいけねえんだ。




「さっきからバカバカうっせーよ。そんならお前はバカじゃないのか?」




「反論になってなくない? なんであたしの話?」




「……お前が、俺以上に賢くなきゃ俺にバカって言う権利無いだろ。」




「権利なんてどこにあんの? 法律? 憲法?」


「あんたが言われたくないだけでしょ」




「ああそうだよ、下のやつにバカにされたくないって思って何が悪いんだ!」




「あたしにまでそのちっさい価値観押し付けないでくんない?」




ちっさいのはてめえの胸だろうが。


「さてはお前、自分に自信が無いから、んなこと言って誤魔化そうってんのか?」


そう言うと、少女は「はぁ……。」とため息をこぼした。




「言う権利は誰にでもあんの。あんたの価値観如きであたしの言動を縛る権利のほうが無いでしょ。」


「んなことねえよ、お前の横暴が通用してたまるか」




「なら、証明したげよっか?」


「バカ、バーカ、バァーカ、バーカ! はい言えた。」




バカばっかだな。


けど、マジで証明されちまったし、通用しちまった。


「…………。」




「黙っちゃってどうしたの?? 効いちゃった?」




……うぜえ。


バイト始めて3ヶ月経つがこんなうざい客は初めてだ。


いわゆる“クレーマー”ってやつか?




「つーか、このコロッケまずいんだけど! なにこれ!? ネ○ちゃんママのしつこいお味!?」


「このスーパー美少女こももちゃんに食べてもらえただけ光栄でしょ?ねーみんなー?」




女の子はコロッケを頬張りながら一人でスマホに向かって話している。


(……なんだこいつ。スマホに話してやがる。)




「お前、もしかして寂しいの? かまってほしいのかぁ? 」




そう言うと、女の子は頬が一気に赤らぐ。




「はぁ!? んなわけないじゃない! な、なんであたしがあんたみたいなバカに構われないといけないわけ??」




「あーそうかよ、ならもう用は済んだだろ。とっととどっか行けよ」




「い、言われなくてもどっか行くわよバカ!一生バカ人生歩んでるといいわ。じゃあね、バカ!」




こいつの辞書には「バカ」って単語しか存在しないのか……?

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