さよなら……

蒼空∞

第1話

静まり返った放課後の体育館。

昨日まで歓声と熱気に沸いていたそこにはもう誰も居ない。

しまい忘れたバスケットボールがコートの片隅に、ポツンと転がっていた。



目を瞑れば、甦ってくる活気に溢れる試合。


この場所で彼は必死にボールを追いかけていた。

そんな彼をメガホン片手に何度も応援した。



額に汗を滲ませてボールを追い掛ける彼を見つめ続けた日々。

胸が張り裂けそうなぐらいドキドキとして、胸が苦しくなるぐらい祈り続けた。

最後のその瞬間まで、彼の姿を目に焼き付けた。



今だって、キラキラ輝く彼の顔をはっきり思い出せるのに、私の隣にはもう居ない。

昨日まで、隣にあったはずの彼の笑顔はもう隣にない。


どうしてかな?

どうして、貴方は居ないのだろう。


磨きあげられた体育館にゆっくりと素足で踏み入れた

ひんやりとしたその感触に、静かに微笑んだ。


ねぇ、貴方が愛した世界が私も好きだったよ。


ドリブルをしながら、時おりこちらを見て微笑んだ時に見えた八重歯も。

額にかいた汗をユニフォームの裾で拭う仕草も。

全てが私をドキドキさせた。



「悠里(ユウリ)」

と呼ぶ貴方の声が今でも耳に残ってる。

なのに、貴方はもう居ない。

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