第42話

 自分で腰に着けたと思しき、ベルトポーチを確かめると、相当額の現金が在った……


「薬…

 いっか…


 アイツのトコ、帰りゃいーし……


 洋子……」


 かなこではない、他の女の名―


 それは佳一が、伽那子の前に同棲していた、別の相手の名前であった……


 然り―佳一は、伽那子と出逢ってからの記憶を、一切失って仕舞ったのである……。



「…この付近で、ダンプカーに煽られている自転車が、目撃されてはいますが…

 接触した形跡は無く、自損事故でしょう……

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