第38話
その
「う…
うん……
これが…ぼく…!」
純哉に起きた奇蹟は―有砂に取っても「奇蹟」だった。
「過去」を失くした純哉は、別人に変わって行った……
恐らく彼生来の、純粋で優しい気質が、そうさせたのに違い無い…有砂は、そう信じた。
有砂は、「海神純哉」の「過去」を、完全に消した。
写真は、全て燃やし…住居は、引き払い…荷物は全て、処分した。
純哉に過去の情報を与える時にも、極力ポジティヴな形にして伝えた。
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