第36話

「奇跡ですね…?

 赤ちゃんも無事です…!」


 「心中」覚悟だったのに―有砂と胎児さんごは、無傷だった。

 皮肉にも―純哉の体が、完璧な「ガード」の役割を果たしていたのだ……。


「…彼は…?」


 有砂は、医師に訊ねていた…彼は、重い口調で答えた。


「…お気の毒ですが…助からないでしょう。

 存命しても…意識は戻らないかと……」


「……!」


 「死ぬ」……


 有砂の中に、様々な想いが巡る……


 グローブボックスに在った「婚姻届」は、事故後も損なわれぬ儘で―眠り続ける純哉の傍に、遺されていた……。

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