第12話

 出産直後に、初めて彼女と対面した瞬間―珠実は、忌まわしい草司の事をも忘れて、その赤子をいだき、乳を与えた。


 だが、シングルマザーになるのは、未だ決め兼ねていた。

 その時―珠実の前に、一人の弁護士が現れた。


「彩木草司の…代理人として、参りました」


「えッ…?」


「先に…

 これを御読みになって下さい」


「………」


 弁護士が珠実に手渡した物は…草司が綴った、彼女への手紙であった……


〝沖元珠実様〟


 金釘で書いた様な、稚拙な字…珠実は、顔を歪める……

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