母になった少女と、我子を想う少年

第10話

 事件から、四年半が過ぎた。

 珠実は、一時休職していた会社に復帰し、弥増して精力的に、仕事をこなしていた。


「御先に失礼します!」


 定時きっかりにタイムレコーダーを押して、颯爽と退社する彼女に、上司は笑って訊ねた。


「まだ帰って来ないのかい?

 海外奉仕活動中の、旦那さんは…」


「迎えに行く場所が、遠いんですよ?


 くれぐれも…夫の就職先の件、御願いしますね☆」


「それは、大丈夫だが…


 済まないね?

 正社員とはいえ、チェーンスーパーの商品管理で…」


「十分です。

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