第5話

 さえは、悠庵に縋り付いていた―彼も、流石にハッとなって、口を噤んだ。

 彼女は、彼を宥める様に、静かに云った。


「…何も…何も、心配なさらないで下さい……


 どうか…私の所へ、おいでに……」


「…?」


 さえの提案に、悠庵は怪訝そうにしたが―程無く、その疑念は晴れ、驚きに変わった。


 彼が、彼女に介助されつつ、上って行った―川から続く坂道の果て…「川上療養所」の標札が掲げられた、門が在った……


「さえ…


 御前、医者になったのか…?」


「はい……

 旦那様と…悠庵さまの、御蔭です……!」

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