待つ娘、還る男

第1話

 その娘は…

 唯、直向きに…

 唯、只管に…

 川を遡る舟を、待ち続けた……。



今日こんにちは、小平次こへいじさん」

 渡し舟の船頭に、何時もの挨拶をする、若い娘…

 彼―小平次は、未だ娘が知らぬ報せを、彼女に齎した。


「今日、日の高い内に…

 島帰りを乗せた舟が、川を上ってくるそうですよ……?」


「…!


 有難う御座います……」


 娘は、小平次に深礼し…微笑んだ。

 彼女が待ち続けていたのは…唯、一人の男だった……。



 流罪るざいから赦された数名の刺青者いれずみもの達が、小舟に揺られている。

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