00.champagneー乾杯ー

第1話

自分年表を作るなら、間違いなく5歳の欄に【ターニングポイント】と記すだろう。




「ひびき、……ごさい」


「……っ」



出会った瞬間、全身に走った衝撃は歳を重ねた今も鮮明に思い出せる。



「あら可愛い、りょうと同じ歳ね」


「そうなんですか?幼稚園は……」


「ヒカリです」


「え、偶然!ひびきも……」



親同士の会話など一切耳に入れず、ただただ一点を見つめていた。


自分よりも低いところからこちらを見上げる瞳はビー玉のように美しく、白い肌に生えるピンク色の唇は艶やかな果実のよう。




(……可愛い、お姫様みたい)




絵本を読むより外で遊びたがるような子どもだったが、去年のお遊戯会で劇をした白雪姫の絵本だけはよく覚えていた。


白い肌も艶のある髪の毛も、目の前のその子は自分が知る唯一のプリンセスそのものだった。



可愛くて、か弱いお姫様。誰かが守ってあげなきゃ死んでしまうお姫様。



……この子は自分が必ず守らなければ。



よわい5、直江涼なおえりょう

神から与えられた使命を理解した瞬間だった。

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