第9話

「姫乃、お茶。」



「…………」




「あ、紅茶な!アールグレイじゃねぇと飲まねぇから!」




………おしゃれだな、おい?





「もう、自分でー…」



「ケーキも食いてぇ。」




…っ!



なんつうわがまま野郎だ。




「そんなのないっ!」



「じゃあ作れよ。じゃなきゃ襲うぞ」



そう言って、疾風が後ろから私のお腹に手を回す。




「わ、わかったから…つくるからぁ!」



私は逃げるようにさっさと台所へ向かった。




くそぉ~、また負けたぁ。



とりあえず、紅茶を炒れて持っていく。



「はい。アールグレイで、し、た、よ、ねっっ!」



語尾に怒りを込めて、マグカップをテーブルに置いた。



疾風は、当たり前とでも言うように、優雅にそれを持ち上げた。



「お、やった。

ズ―…おっ、うめーじゃん。」




「ほ、ほんと!?」



わぁ~絶対けなされると思ってた!


そんなことで、私は一瞬にして上機嫌。




「お前ものむかぁ?」



「え?いいの?」



ズ――…


疾風がもう一口。



え、くれるんじゃ…



マグカップを貰おうと、伸ばした腕が切なく宙を浮く。



……なんだよ、嘘つき。




期待した自分が、バカらしくなり手を引っ込めようとしたときだった。




「っつ!!!!!」




疾風の口が私の唇を塞ぎ、

その間から、甘めの紅茶が入ってくる。



―――ちゅ




唇が離れると意地悪な笑顔で、



「ご褒美。」



って、


…ばかあぁ!//



「なななななにすんの!?」



「え?飲ませてあげた。

光栄に思え。」



首をかしげていった疾風は悔しいくらいかっこよくて…、




「ば、ば、ばかっ!」



そう吐き捨て、真っ赤な顔で台所に逃げ込んだ。

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