第4話
*
「ただいまぁ」
木曜深夜、『Night News』の生放送を終えて自宅に帰宅すると、リビングの常夜灯が点いていた。
消し忘れたのだろうか?と寝室のドアを開けてみたが、布団は捲れ上がっているようなので、彼がリビングにいることは間違いない。
……なんで常夜灯?電気つければいいのに。
そんな考えが頭に浮かんですぐ、今日が木曜日であることを思い出した。数日前に撮影を終えたものだったからすっかり忘れていたが、そういえば今朝は清貫選手へのインタビューが『あさがお』で放映される日だ。
まずい……、と苦笑いを浮かべつつ、恐る恐る床に目を向ければ、玄関から洗面所まで連なる彼の抜け殻。いつもはきっちり家事をこなしてくれる彼がこれを片付ける気力もないとなれば……、私は覚悟を決めなければならない。
もしかしたら、寝ているかもしれないから……と、恐る恐るリビングの扉を開ければ、ソファーの肘掛け部分からニョキっと伸びる小さな頭。
「……」
「あ、碧央くん、ただいまぁ」
「……はお」
「碧央くん、おかえりは?」
「……」
保護猫の如くこちらを警戒する碧央くんに「やっぱり」とため息。テーブルに乗ったカップラーメンを落ちる恐れのないところまで押しやってから、彼がくるまっていたブランケットをばさっと奪い取った。
「なんで取るの、返して」
「だって、じめじめしてるんだもん。このままじゃ碧央くんにキノコ生える」
「……生えたら美味しく食べてね」
「やだよ、今の碧央くんに生えるキノコは絶対毒キノコだもん」
ブランケットを綺麗に畳みながら言えば、いじけたように下唇を尖らせた28歳幼児が潤んだ瞳でこちらを見上げた。
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