第3話

『おはようございます!10月下旬から開始されるクライマックスシリーズに向けて、本日は、『Night News』の久米波音くめはおが出張インタビューにまいりました!』



晴れやかな笑みで画面に映し出される彼女は、同局アナウンサーの久米波音。


彼女がメインキャスターを務める深夜帯のニュース番組『Night News』ではスポーツニュースに力を入れており、選手により密着した取材が行いやすいということで、此度『あさがお』とのコラボが実現した。



『それでは早速、先日史上6人目のシーズン50本塁打の記録を達成した清貫翔洋きよぬきしょうよう選手にインタビューさせていただきます』



ふわりとスカートを翻し、小走りで清貫選手に近寄った久米に『よろしくお願いします』とにこやかに笑う清貫選手。


久米は元々155センチという比較的小柄な体格だが、身長190センチ近くある野球選手の隣に並べば、その体の小ささはさらに強調され、さながらグリズビーとうさぎといった様相である。



『嬉しいな、俺、久米アナのファンなんです』


『え?嘘、そうなんですか?嬉しいです』


『あれ、言ってもらっていいですか?』


『ええ〜、あれですか?』



清貫選手に促され、照れたように笑う久米はわざとらしく一度深呼吸をして、次の瞬間、清貫選手に向き直る。



『今日の終わりに良い夢を。おやすみなさい』



『Night News』のエンディングでお馴染みのセリフを吐けば、『うわぁ、本物だ。可愛い…』と顔を緩ませる清貫選手。画面上にはピンク縁のテロップが表示され、あげく小さなハートまで飛ぶ始末。


『いや、やめてください!恥ずかしいです』と本気の照れを見せる久米だが、そういう仕草もまた男心をくすぐるのを本人は理解していない。


そんな天然さが……——



(俺のはおちゃんの可愛い顔が、全国の男の目に……)



この男のウラの顔を加速させるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る