第6話
「匡…キス、して?」
「…」
青い瞳の奥に縋るように甘い声を出してねだれば、匡は少し困ったように笑って「大人になっちゃいましたねぇ…」と囁き、軽く触れるだけのキスをした。
でもその時の私が求めているのは、子供の頃から幾度となく交わしたこんなままごとのようなキスではなく…
「やだ…もっと、深いの。この前してくれたやつ。」
「…やっぱりですか?…はぁ、悪いこと教えちゃいましたね…。」
「…ん、教えた匡が悪いから…ちゃんと責任とって?」
「あはは、責任…ですか。…了解です。」
口角を上げた匡は格好良くて、刺激的で…。ぎゅうと締め付けられる心臓が苦しくて何故か泣きそうになった。
顎先を掴んで上を向かせた匡は半開きになった私の口に親指を添え、下の歯をツツツ…となぞる。
「舌…出せます?」と聞かれたから素直に従うとフッと笑って背中を撫でながら「上手です。莉音さん…」とその舌を自分の口内に閉じ込めた。
「ふ…んん、」
「鼻で息してくださいね?…莉音さん」
ゆるゆると、柔らかく舌を絡み合わせる甘いキス。
高まる心音、高まる熱。
どうしようもなく、疼き始める体。
激しいキスに飽和状態になった脳がどんどんと馬鹿になって、気持ちいい、もっともっと…と、人間に備わった本能に従うようにこの先の快楽を求め始めた。
「匡、…ん、匡…」
「…ん?」
「苦しい…ぅ、ふっ…」
「ふふっ、苦しいですか?止める?」
私を甘やかすように目を細める匡は勘違いしていた。
苦しい、というのは“キスで息苦しい“という意味ではなかった。その頃の私はきっと匡の想像よりも成熟していて…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます