第8話
いつだって冷静で、クールで…休憩中だって難しい顔をして新聞を読んでいるような東堂さんだ。
きっとハロウィン警備業務でヘロヘロになった帰り道だって、時間を無駄にすることなく何か重要なことに思考を巡らせていたに違いない。
「あの!私、しばらく黙ってますんで!思う存分考え事してください!邪魔しません!」
「いや、だから…そうじゃなくて…」
東堂さんの一番弟子として、師匠の邪魔をするわけにはいかない、と。敬礼をしてミッフィーちゃん宣言をしたのだが、東堂さんは私の心遣いに対して困ったように眉を顰め、それから…
「…写真」
「え?写真?」
「…早瀬の魔女の仮装、見てみたいなって…少し考えてただけだよ」
「………、はぇ?」
「あと、髪長いのも。…別に、ただの興味だからセクハラとか騒ぐなよ?」
「…」
興味…興味、とは?
私の?ハロウィンの?魔女仮装を?髪が長い頃の姿を?見たかったと?興味を持ってくださったと…?
…なんだそりゃ。どういうことだ。
脳内パニックに陥りつつ、こりゃあ自分だけで考えても分からない、と早々に諦めて、「あの…」と東堂さんに声をかけたものの…「…質問は受け付けない」と信号が青に変わると同時、ピシャリと線を引かれてしまった。
でも、進路方向を見据えた彼の耳が、赤信号の光を浴びているわけでもないのに、少し赤いように感じられたから…どうにも口のニヤケが止められない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます