第3話

驚いて顔を上げれば、彼の赤い唇が意地悪に笑みを見せる。




「そんなに心配してくれるなら、恵がちゃんと俺のこと管理して?」



「…なっ、そんな…何度も言ってるけど…私、ただの幼馴染なのに…」



「んー、…そうだけど。俺はお前にとって大事な幼馴染だろ?」



「…んん、」



唇を塞がれる。すぐに舌が滑り込み、それを簡単に受け入れる自分が情けない。



中性的で画面の中ではそこまで大きく見えない要だが、172センチと男性の平均身長は超えている。



身長158センチの私は真上からねっとりとした口づけを受け、喉の奥に唾液が伝う。



手慣れたキスに翻弄されてすぐに腰砕けになる自分が悔しい。



カクンと膝から崩れ落ちれば、要の力強い腕に支えられ、見上げた先の彼は余裕そうに唇についた唾液をぺろっと舐めとった。



その顔は、流石に絵になる。ファンならば誰でも妄想する、貴重な表情だ…きっと。




「なぁ、やっぱり飯より先にこっちからにして?」



「…、」



ぐりっと腹部に押し付けられた硬い感触。



反射で目線を下げれば、彼のモノがジーンズの中で苦しそうに腫れている。



遠慮のない物言いに顔を赤く染めると、「今更女出すなよ、気持ち悪いな」と何ともひどいことを言いながら私の体を抱き上げた。




「もう何日?2週間くらいか?」



「…」



「先週お前が仕事でウチに来ねぇから、溜まってんだよ」



先週も今日と同じように家に来るよう言われていたが、仕事で出張中だったため断ったのだ。



そのことを今日まで電話やメールで何度責められたことか…。



心が狭い、ねちっこい、面倒くさい。



「そんなに言うなら自分でしなよ」



「は?アイドルは自分で抜くとかしないんですぅ〜」



「…っ、わ、私以外の子で発散すればいいじゃん…。あんたとしたい子なんていくらでもいるで…」



「…」



「…っきゃ、」



話の途中でベッドに投げ捨てられて舌を噛みそうになった。



完全に女の子の扱いじゃない。ファンに見せるあの優しい笑顔は決して私に向けられることはなくて。



こんな少しのことで実は傷ついている、なんて…こいつは絶対気づいていないし、絶対に気づいて欲しくない。

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