青春は幻でした

白銀(はくぎん)

第1話 待ちに待った高校生...?

桜が美しい花を咲かせ暖かな風が吹く4月。出会いと別れが星の数程執り行われ、中学生という節目が終わりを迎え、高校生になり新たな出会いと新たな世界に胸をときめかせ華の高校生活ひいては青春のメインエピソードが始まる......はずだった。

「はぁ...高校生になっても中学生と何も変わらないな。」胸をときめかせて迎えた私立星蘭高校の入学式楽しい高校生活の大切な1日であったはずの今日は自分が思ってたより平凡かつ地味に終わった。「まじで先生の話聞くのだるいな、お前もそう思うだろ白銀?」そう言って俺の隣で苦笑しながら話しかけてくる微青年(美青年ではない)は幼稚園からの親友(?)である南雲秀一だ。「そうだな...なんか大切な事言ってたっけ?」と俺は返事しつつ、入学式後に出来たクラスLEINで次々と会話が行われている様子を眺めていた。クラスLEINでは、恒例行事である自己紹介と何気ない会話が行われていた。「お前は自己紹介したん?」LEINの内容を覗き見してきた南雲が俺に問いかけてきたが俺は「まぁ簡単な名前と趣味くらいなら」「ふーん」親友(?)なのに会話少なくない?と思ったのは心にしまっておこう。

「とりあえず帰ってゲームでもしようぜ」と言ってくる南雲に「そうだな...新作ゲームやるかぁ」と返しつつ帰りの電車を調べていた時だった。

「好きです」そう透き通った氷のような綺麗な声が響き渡ったのは。「「は?」」思わずハモってしまった。(いやいや入学式だぞ、まさかそんな早く告白イベントが起きるなんて...)と内心思いながら、声の聞こえた方を覗いてみると...(何故か南雲が肩に顔をのせて来た...キモイな)そこにいたのは綺麗な銀髪(?)の可愛い女の子(胸は控えめだった)と黒髪イケメン(某漫画の主人公みたいな見た目)をした2人がいた。(おいおいこれって...)明らかに学園物語にありそうな展開だ、大抵の場合OKされてイチャイチャするのが定番である。がしかし、そんな展開が起きるのはやはりアニメや漫画だけの様だった。「ごめん...陽炎のことは大切な幼馴染だけど異性として好きではないんだ...」へぇー陽炎って名前なんだ珍しいなと呑気な事を思いつつ事の最後を見届けようとしたら、「...わかった」陽炎の呼ばれた女の子はその体を震わせながら春の風で消えてしまいそうな程小さな声で返事をした。「俺たちは何時までも一緒だし幼馴染だろ?だから...」「わかったから!」途中で話を遮るようにそして先程の声量からは考えられないほど大きな声で彼女は叫んだ。「わかったから...とりあえず俺はもう行くね」そう言って美青年(微青年じゃないよ)は小走りで去っていった。(あ〜...よくある失恋だな)と思いつつ振られた当の本人を見てみると体を小さく震わせたまま立ち尽くしていた。(まぁ長い間好きだっただろうから振られたダメージはデカいだろうな)と思って顔を見てみると、殺意マシマシ二郎系ラーメンもびっくりなマシマシ具合の顔をしていました(うん怖い)「おーい振られた知らない女の子なんて無視してさっさと帰ろうぜー...おーい」完全に他人事として捉えている南雲は呑気にそんなことを言ってる。南雲に振り返りつつ「それもそうだな帰るか」「..みた」ん?なんか声が「見たね?」いやいやそんなはずない幻聴だ幻聴疲れてるんだきっとそう言い聞かせながら振り返るとそこには死んだ魚より死んだ魚(?)の目をしながらも目の奥には明確な殺意を宿した銀髪の女の子が。あっこれ殺されるパターン?人生終了RTAですかそうですか。なんて心の中で思っていると、「...少し付き合ってください」低い抑揚のない声で言われた。「え、でも面識ないし...」「...来てね?」さらに低くなった声で言われた。

初日からなんで俺はこんなラブコメで見る様な現場に巻き込まれなければいけないのだろうかと思いつつ、言われるがままについて行ったのであった。これから始まる素晴らしい高校生活の幕開けがこれだとは思いたくないなと考えながら。

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