第6話消えたキリンのぬいぐるみ

「ねぇ、今日の夕飯どうする?」キッチンに立つ。モネの声を聞き。

 私は「冷蔵庫に余った。野菜を消費したいから。野菜炒めは?」

 と言葉を返す。私たちが、一緒に暮らし始めて。一ヶ月が経った。

 人は、ひと月経つ。その環境に順応するものだと、身をもって

 実感している。私が、こっちに来てから。もう、一ヶ月経つのか。

 月日が経つのは、早いものだ。モネが休みの日は(元々こっちの方に

 いるモネのこと)が朝、昼、晩と料理当番だ。モネの作る料理は

 どれも美味しい。私って、こんなに料理上手だったけ?

 別の世界線から来た。私は、時々思う。私たちは、同じ人だけど。

 微妙に、違う部分があるみたいだ。例えば、利き手は二人とも違う。

 こっちのモネは左利きだけど、私は右利きだ。それに、私は猫派だけど。

 こっちのモネは犬派だ(まぁ、わたしも犬も猫もどっちも好きだけど)

 些細な事だけど。この微妙な違いが、個性をだしていると。ここ最近

 私は思う。「ねぇ、野菜炒めに入れる。肉は、豚肉でいいよね?」

「うん。いいよ~」それは、野菜炒めでもそうだ。私は、野菜炒めに

 牛肉を使うけど(その方が高級感がでる気がするから)こっちのモネは

 豚肉を使う。しかも、豚のバラ肉を。まぁ、それでも両方の野菜炒めは

 美味しいけどね。別になんの変哲もないけとだけど。この微妙な違いが

 私たちはかなり重要な事に思える。モネが、夕飯を作っているのソファーの

 真ん中に座り。スマホを弄っていると、ソファーの横の本棚の上にポツンと

 お座りしている。ゾウのぬいぐるみが気になってしょうがない。

 「ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」「うん?なに?」フライパンで、野菜炒めを

 踊るように炒める。モネに、ゾウのぬいぐるみの事を聞く。

 「このゾウのぬいぐるみさぁ。どこで、買ったの?」ゾウのぬいぐるみを

 買った場所をモネに聞くと「あぁ、それね。それね元彼の誕生日プレゼントなの」

 「えっ⁉そうなの・・・・・・」私は、驚いた。「なんか。捨てられなくて、その

 子。他の物は、全部捨てたけど。その子だけは、どうしても捨てられなくて」

 この少し色の薄いゾウのぬいぐるみに、そんなに愛着があるのか。まぁ、それは

 私も分かる気はする。「私の家には、元彼からプレゼントされた。汚れたキリンの

 ぬいぐるみが、私も捨てられなくてさぁ」「私のとちがうね」モネが驚きながら

 炒めた野菜炒めを皿に盛りつけをする。「私も、どうしてもその子だけは捨てられ

 なくて。他のくだらないガラクタは躊躇いもなく。簡単に捨てたのに」モネの

 ゾウのぬいぐるみを捨てられないと一緒で、私も元彼からプレゼントされた。

 キリンのぬいぐるみを捨てられない。それは、愛着がある訳じゃなくて。

 単純に、それだけが捨てるをめんどくさい。そんな簡単な理由だけど。

 「はい。できたよー」「おっ!待ってましたー」モネが、キッチンから。

 野菜炒めと余り野菜で作った。即席野菜スープを持ってきた。

「それじゃあ。いただきます」「いただきます」二人で、律儀に手を合わせ。

 いただきますと言ってから。夕飯を食べる。その横目で、本棚の上にポツンと

 佇む。ゾウのぬいぐるみを見ながら。モネの作った。野菜炒めを口に頬張る。

 こっちのモネの部屋には、あのキリンのぬいぐるみがキレイに消えていた。

 

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