伝えられた
「あの時の正人君は凄くかっこよかったわ……思えば、あの時から私は正人君のことばかり話をするようになったものね」
「そうねぇ……私たちは二人とも正人君に助けられたのね。ふふっ、本当にあなたに会えて良かったわ」
「……………」
えっと……非常に気まずいとは言わないけれど、藍沢家に訪れてからずっと褒めちぎられて何とも言えない変な気分になっている。
(隣に座る瑠奈もそうだけど……正面に座る麗奈さんが刺激的過ぎて話が入ってこないってのが正しいか?)
家に着いた時にも思ったが、瑠奈の恰好はまだ良い。
ただ麗奈さんの恰好が本当に凄くて、今まで見た麗奈さんの印象としてはお淑やかというか……古い言葉を使うなら大和撫子の言葉が似合う。
そんな人が瑠奈以上の豊かな胸元の谷間を見せるような服を着ていること……それが衝撃であったと共に、俺を冷静でなくしている。
「あら、顔が赤くない?」
「……えっ?」
麗奈さんがそう言ってこちら側に身を乗り出す。
俺と瑠奈、そして対面の麗奈さんの間にテーブルがあるとはいえそこまで大きなものではないので、身を乗り出せばすぐに手が届く距離だ。
伸ばされた麗奈さんの手は、俺の頬へと触れた。
「凄く熱いわね……」
顔が赤い=熱でもあるかと思われたのだろう。
だがある意味で熱があるようなものだし、麗奈さんがそんな体勢になると重力に違って伸びる胸が更に見えてしまう。
「っ……」
「お母さん、はしたないわよ」
瑠奈の言葉は俺を助けてくれた。
ただそう言われた麗奈さんは俺がどんな風に見ていたか、それを全て察したように顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい……ちょっと浮かれているのかもしれないわね」
「……………」
何だこの人……可愛すぎない?
以前にも思ったことが麗奈さんは確かに瑠奈のお母さんであり、うちの母さんと同じようなものだ……だがその見た目は大学生くらいのお姉さんと言っても差し支えなく、何が言いたいかと言うと若々しいのだ非常に。
つまり可愛い……自分よりも遥かに大人であることを忘れてしまうほどの笑顔が本当に可愛いんだ。
「それだけ正人君が来てくれたことが嬉しいのね……ま、私もだけど」
「そ、そっか……」
瑠奈と麗奈さんから見つめられ、何とも言えない感覚に包まれる。
(……ちょっとトイレに行こう)
美女二人に囲まれてトイレに?
馬鹿野郎普通に催したんだ。
「ちょっとトイレ借りて良いでしょうか……」
「え? 分かったわ。案内するわね」
「そういえば、前回は利用することなかったものね」
瑠奈に案内され、まずはトイレで休憩だ。
「……………」
実を言うと、彼女たちの表情を見ていて分かるというか……もしかしてと考えていることがある。
「麗奈さんはあり得ないけど……瑠奈と莉羅はやっぱり……俺の事を好きだったりするのかな?」
口に出して恥ずかしくなるが、最近は……というより莉羅とのやり取りを経てほぼほぼ強い確信に至っていた。
ずっとそれに気付かないフリをしていたのは、まさか俺に対してそんなことあるわけがないというものと……そして。
「……助けたことによって好意を抱かれたかもしれないってことだ」
彼女たちにとって絶体絶命の瞬間を助けたのが俺だ。
それだけで人を好きになるのかは分からないが、世の中にはつり橋効果というものがある……それに。
これに関してはあまりに莉羅が分かりやすいが、果たしてただのクラスメイトだと思っている男に対し、家に招いたり……更にはあんな風に体を押し付けたり出来るか……? いや、いくら助けたことを恩に感じているとしても流石にそれはないと断言出来る。
「まあ、俺が助けた代償にそうしろって言う鬼畜なら分からんが」
まあ、そんなことは絶対にないけど……。
でも莉羅に関しては家でのやり取りも含め、その日の夜のメッセージでもそれは良く分かった……でも、だからこそ本当にどうすれば良いのかが分からないということだ。
「ほんと……分かんねえや」
もちろん、これが考えすぎならそれでも良い。
これがもしも本当のことで彼女たちが好意を抱いてくれているのなら、それはそれで凄く嬉しいこと……でも、だからと言って俺はどうアクションするべきなのか分からない。
「結局俺は優柔不断というか……行動に移せない弱い奴だ」
誰かと付き合いたい、誰かと愛し合いたい。
そんな願望と欲望はもちろん持っている……でも実際にそれを手に出来るかもしれない状況を前にした時、俺は今が変わってしまうことに恐れて前に進めない。
付き合うとか付き合わないとか、そんなの気にせず……けれども瑠奈や莉羅と過ごすことに喜びを感じ、彼女たちから何を言われても、何をされても困惑しながらも喜ぶ卑怯者が俺だ。
「……それは流石に自分を卑下しすぎかな」
こんな顔をしていてはダメだと、悪い考えは一旦頭から弾き出してリビングへと戻った。
今日は朝から来ているのもあってお昼も用意してくれるらしいが、リビングに戻った俺はすぐに瑠奈に手を引かれた。
「私の部屋に行きましょう」
「部屋?」
「お昼になったら呼ぶわね」
笑顔の麗奈さんに送り出され、そのまま瑠奈の部屋に向かう。
「……………」
「二度目ね。あの時は私は起きてなかったけれど」
彼女が言ったように、こうしてここに来たのは二度目だ。
ただあの時と違って瑠奈はちゃんとそこに居るし、前とは全然違う緊張感のようなものがある。
「ほら、座って?」
「お、おう……」
瑠奈に促され、座布団の上に座った。
すると瑠奈も肩がガッツリ触れてしまうほどの距離に座り、ギュッと腕を抱いてきた。
「っ!?」
腕に当たる豊かな膨らみもそうだが、良い匂いも感じる。
(こ、こんなの普通の相手には絶対にしないだろ……!!)
そうだ……だから分かってしまう。
これで何してんだよとツッコミを入れるような人間は、ただ不自然に鈍感を演じるだけの人間だと断言出来る。
「莉羅が……送ってきたから」
「……へっ?」
「昨日の放課後……莉羅の家に行ったんでしょ?」
「……………」
「正式に女の子の家に行くこと、べったりと触れ合うこと……その初めてを全部もらったからってメッセージ来てた」
莉羅……さん!?
俺の困惑を知る由もなく、瑠奈は言葉を続けた。
「別に怒りは無かったわ……だってあの子も私と同じで、あなたに救われたことがきっかけでこうなったんだもの。だからあの子と逆の立場なら私だって同じことをしたと思う。
「瑠奈……」
「こんなこと……普通の人には、何とも思ってない人にはしない」
瑠奈は、言ってしまった……俺の考えを裏付ける言葉を。
「私は、正人君が好きなのよ」
もう、気付かないフリをして逃げるような道は残されていない。
NTR展開を阻止しまくっていたら、いつの間にか重たい女の子たちに囲まれていた件 みょん @tsukasa1992
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。NTR展開を阻止しまくっていたら、いつの間にか重たい女の子たちに囲まれていた件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます