月末

金木犀

第46億話

「本日、月が落下します」

壮大な出来事、おそらく地球が終わる可能性だってある事象。

なのにテレビに映る女性の顔は、怒りも悲しみも、ましてや喜びも感じていないように見えた。

それは私も、変わりないのであるが。


月が落ちると言っても、どう落ちるのだろうか?

重力の変動?しかし我々人類は何も感じていない。

思考を回していると、私の脳に何か爆発音のようなものが侵入してきた。

重たい腰を上げ、上がらない足を動かし、扉を開ける。

空を見上げると、真っ赤な陽の光に照らされた月から煙が上がる。

…あぁ、関係の無い情報かもしれないが、今は昼時、ちょうど正午過ぎだろうか。

煙を上げた月が、人類には到底再現できない火力をまとい、地球を目がける。

なぜ、わざわざ日本へと墜落したのだろう。

こちらが昼であれば、月はこちらに落ちずに済んだのに。

そんなないものねだりばかりが頭をよぎるが、こちらを目がけた月は止まらない。

月に刻まれたクレーターがハッキリと見える。

3つ…4つ…いや、10はあるだろうか?

私の観測を阻止するかのように、月から削り落ちた岩が目にぶつかる。

「まもなく、月…にぶつかろうと…ます…3……1……」

ノイズばかりのラジオが、地球の…いや、日本の最後の記憶だった。


「Hoje é o dia em que a lua se chocou contra a parte traseira do nosso Brasil, um ano depois, e a cratera ainda permanece aberta na Terra...」


…何言ってんのかわかんねぇや。

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月末 金木犀 @kinmokusei_GL

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